抜いても抜いてもキリがない。短編小説『しつこい緑が教えてくれたコト』

zassotorikirinai

「カーチャン、あっちぃよー。雑草なんか抜きたくねえよ~」

「文句ばっか言ってないで早く抜きな。小学校も夏休みに入って暇でしょ」

「そんなことねえし。小学三年生チョーいそがしいし」

「はいはい」

「うえぇぇ」

「草取り終わったらかき氷作ってあげる」

「すぐ終わらせる」

 かき氷に釣られてオレは庭の草取りを始めた。
 カーチャンも草取りやれよって言おうと思ったけど、かき氷という言葉の魔法ですでにオレのアタマから消えちゃった。
 夏の太陽はビシバシと日光を降らせて、オレの肌をチョコアイスみてえに真っ黒にするつもりらしい。
 あちぃ。
 東京に転校したトモダチは、家にクーラーがあるって言ってた。
 オレんち?
 あるよ。
 壊れてるけど。

 オレはヤケクソになって草取りに没頭した。
 

       *
 

 一週間ほど経つと、またポツポツと雑草が生えてきた。
 

「マジか……」
 

 アタマに来たから抜いてやったぜ。
 カーチャンに言われてもないのにだよ?
 えらいわー。
 オレってばえらいわー。
 でもカーチャンはかき氷作ってくれなかったわー。

「だってアタシは頼んでないし」

 だってよ。
 オトナの世界には「ケイヤク」っつうのを結ばないと見返りはねえんだって。
 なもんだからカーチャンとかき氷ケイヤク結ぼうとしたら無視された。
 オトナってないわー。
 

       *
 

「げ……」

 それからまた一週間ほど経つと、庭にまた草が生え始めていた。
 ケイヤクっつうのを結んじゃいないけど、オレは草をまた抜いた。
 こいつぁオレと雑草との闘いだぜ!

 けど……

 抜いても抜いても生えてくる。
 しつけぇ。
 宿題やれってやかましいカーチャン級にしつけぇ。

「くそっ、このっ、あほっ」

「なーに吠えてんだオメェは」

「あ、トーチャン」

 トーチャンに雑草のことを相談してみた。
 すると、

「固めちまうか」

「カタメル?」

 トーチャンはカタメル宣言をすると車でホームセンターに向かった。
 帰ってくると、そそくさとナゾの作業を始めた。
 何が始まるのかと見ていると、トーチャンは土の上にセメントを流して固めた。
 土はコンクリートに覆われて、雑草はもう生えてこなかったよ。

 反則じゃね?

       *

 15年後。
 俺は久方ぶりに実家に帰ってきた。
 ……帰りたくはなかったけどな。
 バンド活動したくて田舎出て東京行ったっつうのに、芽が出なさそうだからって戻ってきちまった……。
 家の引き戸に手をかけ、深呼吸。
 よし、カーチャンにバカにされ、トーチャンに怒鳴られる覚悟はできた。
 そして引き戸を開けようとしたオレだったけど、視界に見慣れない物体があって思わず動きを止めてしまった。
 
 
 
 
 庭に小柄な木が生えていた。
 固められたコンクリートを突き破って。
 
 
 

「マジかよ……」

 
 その木はコンクリートの硬さなどもろともせずに空に向かって枝葉を伸ばしている。
 コンクリートはというと、雑草の上へ延びる力に負けてひび割れていた。
 幾筋もの罅がコンクリートの上を走り、まるで地面にも枝を伸ばしているかのようだった。
 雑草しか生えないかと思ってたら木かよ。
 風に乗って木になる種でも飛んできたのか?

「たくましいじゃねぇか……」

 実家の引き戸にかけていた手を離し、俺はその場を後にした。
 もうちょっとだけ、がんばってみっかな。
 オレはまだ、諦めない。
 

※あとがき
『緑の教室』というお題で書いた即興小説を加筆修正した作品です。
まぁ、こういう話書いといてなんですけど、
キツイなら撤退するのもありかと。
例えばブラック企業でがんばってる人とかね。
 

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