今日で形勢逆転させてやる。短編小説『ダークスパイラル』

darkspiral

(お、来たか)

 僕は教室に入ってきた高橋を横目で視認すると、彼が通るタイミングで足をかけた。
 高橋は思い切りひっかかりすっ転んでいた。
 どっと沸く教室内。

「……っ」

 高橋はというと、僕のほうには目を向けることもなく平然を装って自分の席へ向かった。
 だが彼の席に椅子はない。
 僕がやったって?
 違うって。
 別の男子がやったんじゃないの?

 高橋は椅子がないことに気付き、クラスメイトたちの様子を窺うが、誰一人として彼と目を合わせる者はいなかった。
 クスクスと小さく漏れる嘲笑が聞こえるぐらいかな。
 

 高橋は諦めたのか、教室の外へ出て行った。
 空き教室から適当な椅子を調達してくるのかな。
 まあどうでもいいけど。
 
 

      

 高校に入学したら、人間関係ががらりと変わった。
 中学時代は話の合うヤツなんていなかったけど、高校に入ってから波長の合う人間が多かった。
 趣味が合うっていうよりは気が合うって感じ。
 なんとなく仲良くなれなかったり性格が気に入らなかったりする人っているでしょ?
 中学時代は周りがそんなのばっかで大変だったんだよ。
 だから今は凄く楽しいよ。
 

 
 高橋が椅子を持って教室に戻ってきた。
 僕はまた足をかけてやった。
 ガタゴトと椅子を転がして派手な音を立てながらヤツはこけた。
 ハッ。
 楽しいねぇ。
 
  

       *
 

 野本に足を引っ掛けられて俺は転んだ。
 いや、転んでやったんだよ。
 しっかりと受身も取ったし、わざと椅子を放り投げたおかげで派手さも増した。
 見ろよ。
 クラスメイトは爆笑してるし、なにより野本のニヤケ面が俺の芝居の成果の高さを示している。
 

 ……これは、野本の復讐なんだ。
 

 俺と野本は中学時代の3年間同じクラスだったんだけど、立場は今とは逆だった。
 野本がイジメられる側。
 俺が野本をイジメる側だった。
 
 それが高校に入って人間関係が変わったら、俺はハブられて野本が俺をイジメる側になっていた。
 高校には俺と気の合うヤツがいなかった。
 なんかノリが合わねぇ。
 ほかのクラス見ると上手くやってけそうな気もするんだけど、このクラスはハズレだったらしい。
 
 
 
 

 でも、今日で形勢逆転させてやる。
 
 
 

 俺は自分の席に座ると、スクールバッグからこの日のために買った小型のスピーカーを机の上に置く。
 それからスマホを操作し、スピーカーとの無線接続を済ませる。
 クラスのヤツらからの視線を感じる。
 あいつは何やってんだ?
 みたいなバカを見る目でこっちを見ていやがる。
 もちろん野本もだ。
 ニヤニヤしてるのも今のうちだ。
 俺は録音しておいた音声を再生させた。
 

『あのさぁ、佐藤さんって好きな男子とか……い、いるのぉ?』

『……うん、いるよ』

『え、それって、俺だったりする?』

『はぁ? んなワケないでしょ』
 

 教室が爆笑の渦に呑まれる。
 野本が同じクラスの佐藤という女子にこっぴどく振られていたのだ。
 野本はというと顔を真っ赤にしておろおろしている。
 くくくっ、これからだぜ、野本。
 

※あとがき
『不屈の悪意』というお題で書いた即興小説を一部修正した作品です。
救いのない小説が出来上がってしまた…。
ただ、バッドエンドで嫌いになれないんですよねぇ僕は。うん。
 

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