捕虜は踊らないと死ぬしかない。短編小説『捕虜の舞』

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しくじった。
まさか敵の捕虜になっちまうとは……。
俺は今、敵地の一室で尋問を受けている。
尋問しているのは初老の男で、頬がこけてゲッソリと痩せている。
その割りに眼光は鋭く、狡猾な性格がにじみ出ている。
できれば話し相手にはなりたくないし、それ以前に関わり合いになりたくないタイプだぜ。
「いいか、もう一度訊くぞ。貴様ら魔術学会が最近スカウトした魔術師はどこにいる」
男がかすれ気味の声で訊ねた。
「彼女はアイドルだ。居場所はともかく見たければテレビを点けてみればいいだろ。どっかのチャンネルに映ってるんじゃないのか?」
「彼女は最近引退したそうだが?」
「…………」
俺は押し黙った。
実際、彼女はもう引退している。
「さあ、吐け」
「ふんっ……」
「そうか。ならば踊ってもらおう」
「踊って……?」

場所を移され、俺はやけに広い空間に立たされている。
周囲には何もないのだが、壁面と床に魔術が施されているのが見て取れた。
強度を上げているようだがなぜ……。
俺のほかには誰もいない。
さっき俺を尋問していた男は俺をこの部屋にいれるなりどこかへ行ってしまった。
――と、
「さあ、踊ってもらおうか。アイドル魔術師の居場所を吐きたくなったらいつでも吐いていいぞ」
「誰がテメェなんぞに……うおっ!?」
天井に穴が空き、そこから機関銃が現れた。
次の瞬間には滂沱の数の銃弾が俺に見舞われた。
銃弾は床に着弾した傍から蒸発していく。
魔術をかけている理由はこれか……!
「くっ……」
銃弾は俺の足元に撃たれていく。
俺はまるでコサックダンスでも踊っているかのようにかわす羽目に……。
踊りってのはこれのことかよ!

結局、俺は一時間ほど『踊らされて』から独房に入れられた。
まだ口は割っていないが、また『踊り』をさせられるのかと思うと生きた心地がしない。
誰か、助けてくれ……。

 
※あとがき
『簡単な踊り』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
躍らせるほうは簡単だよ☆という意味であって、踊らされているほうはたまったもんじゃないな……。
ちなみに作中に登場するアイドルは、前回投稿した短編『アイドルは魔術師』に登場するアイドルです。
続編という気はサラサラないのですが、『アイドルは~』の後に続けざまに書いたせいでこのような形になってしまいました(笑)

 
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