千年後に目覚めた私が見たものは……。短編小説『飛んでいるわけではない村』

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tonderumura

「飛んでいるわけではないのです。この村以外何もないから、飛んでいるように見えるのです」

 村長にそう説明されても、私にはちっとも理解できなかった。
 この村以外に何もない?
 

       *
 

 二十七歳のとき、私は自分の体を凍結させた。
 寿命はそこでストップ。
 私は歳をとらない。
 瞬間冷凍させて凍結させるその手術は、当時ちょっとしたブームになっていた。
 争いの絶えない混沌とした世界。
 先の見えない世界。
 けれど遠い未来は平和で、希望に満ち溢れているかもしれない。
 当時、多くの人がそう考えるようになっていた。
 そこで凍結手術が注目された。
 自分の体を凍結させ、身体機能を停止させる。
 死んでいるわけではない。
 ただ、活動が停止しているだけだ。
 時間凍結とも呼ばれていた。
 実際、時間を凍結したも同然だからね。
 一定時間が経つと体は自動的に氷解し、身体機能を取り戻すようになっている。
 人によってまちまちだけど、私は千年後に目覚めるようにしてもらった。
 千年も経てば、少しは状況が良くなるかなと思って。
  
 けれど目覚めたら、私は奇妙な村で目覚めた。
 村長と名乗る老人が目の前にいて、彼によると私は村にある山から発掘されたのだとか。
 凍結された私の体は、凍結体を保存する専門の施設に補完されていたはず。
 けれど私が目覚めたとき、施設なんて影も形もなかった。
 私が凍結されている間に、世界は一度崩壊でもしたのだろうか……。
 私は自分の生い立ちを説明し、凍結手術のことも話したけど、村長は首を傾げるばかりだった。
 

       *
 

「浮いて、る……」

 眼前に広がる光景に、私は息を呑んだ。
 そこにあるのは闇。
 どこまで言っても闇。
 夜空を飛んでいるように見えるけど、そうじゃない。
 この村しか存在しないからそう見えるだけ。

 村長に案内され、私はこの村の「縁」に来ている。
 縁より先は何もない。
 もし縁より先に一歩を踏み出そうものなら、落ちていくだけなのだという。

「どうして、こんなことに……」

「さぁ、どうしてと言われましても。生まれたときからこの村しかない環境でしたので」

「ここは日本なの?」

「ニホン? なんですかそれは」

「…………っ」

 目の前の景色とは裏腹に、私の頭の中は真っ白になった。
 こんなの、私が望んだ状況じゃない。
 ただ、もっとイイ世界を見たかっただけなのに。
 こんな村だけの世界だなんて分かってたら、私は……。

「あ、それより先に行くと……!」

 村長の制止の声は最後まで聞こえなかった。
 私は村から飛び降りた。
 

 落ちていく。
 落ちていく。
 下から上へと吹き抜けていく風が気持ちいい。
 どこまで落ちたら、終わるのだろう。
 

※あとがき
「とんでもない村」というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
数年前に体を冷凍させて手術をした、なんてのを何かの番組で見たのを思い出して書きました。
千年後、どうなっとるんでしょうねぇ。
それ以前に明日がどうなるかも分かりませんけどね。
大地震が起こる可能性はリアルに考えられるワケですし。
いつ死ぬか分かりません。
人生、心躍ってなんぼですよ。
 

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