大火事で家々が燃える中、唯一助かった家。短編小説『戦艦ハウス』

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 クラスに変なヤツがいた。
 名前は阿賀辰之助(あがしんのすけ)。
 名前からして特徴的である。
 阿賀はいつも迷彩柄のズボンと上着を着ていて、いかにもサバゲーなんかをやっていそうなヤツだった。
 うちの高校は制服なんでもちろん校則違反。
 注意されては渋々とあいつは制服を着るが、目を放すとまた元のサバゲー野郎に戻っていた。

       *

 俺の家は阿賀んちの近くにあるアパートだ。
 ここらへんは古い木造家屋が多く、火事になったらご近所まるっと壊滅だな。
 なんてよく笑い話にしてた。
 

 そうしたら、本当に火事になった。
 

 笑い話ではなく、壊滅した。
 一軒の家のタバコの火の不始末から発生した火の手は、木造の家々を糧にして巨大化し続け、津波の如く近所を飲み込んだ。
 その中には、俺んちも含まれていた。 

       *

 だが、一軒だけ炎の直撃を受けたのに助かった家があった。
 阿賀んちだ。
 随分後になってあいつは俺にこう語った。
「俺んちの壁は戦艦の装甲でできてるからな。火事の火ぐらいで燃えたりしねえし」
「…………」
 俺が言葉を失ったのは言うまでもない。
 戦艦の装甲?
 なんだそりゃ。
 けれど、阿賀のミリタリーオタクっぷりを見ていれば納得もした。
 あいつだけでなく、あいつの家族もまたミリタリーオタクで、オヤジさんなんかは現役の軍人だったりする。
「もしかしてお前んち、火事を見越してそんな家を建てたのか?」
「らしいぜ。だってこの辺り見ろよ。みんな古くせー木造の家だぜ。火事なんか起きたら一気に火の海になるのは目に見えてるぞ」
「だよな……」
 それまでずっと鼻で笑っていた阿賀を、初めてスゲェと思った瞬間だった。

       *

 以来、俺は加賀とよくつるむようになった。
 さすがに迷彩柄の格好して学校の中を闊歩したりはしないが、普通に話すようにはなった。
 燃えちまった俺んとこのアパートは、幸い火災保険が降りてどうにかなるようだ。
 でも俺はオヤジたちを説得して、どうにか戦艦の装甲を壁に使って一戸建てを建てるよう説得している。
 

※あとがき
『戦艦の壁』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
いやぁ、即興小説を通じて僕は『無理やり小説を完成させるスキル』をかなり上昇させたなー、させちゃったなーと思う作品だこりゃ(笑)
いやでも、世界中を探せば一軒ぐらい戦艦の装甲を使った家があっても……ないか。ないですね。
 

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