ちやほやされたくてオタサーに入った結果…。短編小説『姫の誤算』

4364069a9d9ca3c6dcabe017d9c5f008_s

(狙い通り……フフフ)

 奥沢友香(おくさわともか)は胸の内でほくそ笑んでいた。
 彼女は今、大学のとあるサークルの新入生歓迎会に出ている。
 居酒屋の座敷を借りて行われているそれには、三十人ほどが集まって酒を注いだり呑んだりしていた。
 友香は未成年なのでソフトドリンクでお茶を濁している。

「奥沢さん、ジュース足りてる?」

「ねぇねぇ奥沢さん、サークルはもう僕らのとこに決めた感じ?」

「友香ちゃんはどこに住んでるの?」

「あっ、テメェどさくさに紛れて奥沢さんを名前で呼んでんじゃねえよ!」

 友香の周囲には先輩たちが集まっていた。
 その全てが男子。
 友香が出席している新歓は、漫画研究サークル。
 いわゆるオタサーだ。
 男子ばかりで、女子がいない。
 友香はそれを見越してこのサークルの新歓に出席したのである。
 

       *
 

 友香は小学校からずっと、パッとしない学校生活を送っていた。
 友達がいなかったワケではないけれど、とかく男子には縁がなかった。
 それは中学に入っても続き、高校は女子校を選んだせいで余計に男子と関わる機会がなくなった。
 男の子にちやほやされたい。
 あわゆくば、彼氏ができたら…。

 大学に。

 大学に入ったら……。

 わたしは変わるんだ!

 友香はそう決意した。
 思考をめぐらせた末に彼女が出した結論は、
 
 

 オタサーに入る。
 
 

 である。
 自分を変えるのではなく、環境を変えることにしたわけだ。

 友香は新歓の後、正式に漫画研究サークルに入ることにした。
 彼女の大学生活はこれまでとは比べ物にならないほど心躍るものとなった。

 だが、それも長くは続かなかった。
 

       *
 

 他大学のサークルと合同でイラストの展示会をやることになったのは、GWが明けて一週間が経った頃のことだった。
 サークルの代表が話をつけてきたらしい。
 友香としてはさらに男子に囲まれてちやほやされるのではないかと目論んでいた。
 

 が……
 

「桜井くんっ、イラスト上手いね!」
「え、そ、そうかなぁ。てへへ」
「どうやってこんなに上手く絵描けるのぉ?」
「いやぁ、そんなに俺って絵上手いかなぁ。でゅふふ」
「今度いっしょにアキバ行きましょうよ~」
「ぼ、僕なんかといっしょでいいの!?」
 
 

(え、なに、どゆこと?)
 
 

 いざ他大学のサークルを招いて懇親会を開いてみると、友香の予想外の展開に。
 他大学の漫画研究サークルは、女子ばかりだった。
 友香をちやほやしていた男子たちは、早々に他大学の女子と話すようになり、友香には目を向けなくなってしまった。

(……わたしの、大学、生活……)

 みんな楽しそうにイラストを描いている。
 懇親会というからてっきり居酒屋にでも集まって呑んで騒ぐのかと思いきや、ファミレスに集まってオタク話をしたりイラストを描いているではないか。
 ちなみに友香はイラストなど描いたこともなかった。
 取り残された友香は、ちびちびとオレンジジュースを飲んでいるのだった。
 

       *
 

 漫画研究サークルの部長、緒方直哉はホッと胸を撫で下ろしていた。
 みんな楽しそうにイラストを描いたりアニメの話に花を咲かせている。
 

(はぁ、よかった~……)
 

 奥沢友香が入ってきてからというもの、サークル内の雰囲気は悪くなる一方だった。
 みんなが友香と仲良くなろうと躍起になり、互いに牽制しあってたから。
 直弥にしてみれば、アニメもろくに知らない友香がどうしてサークルにいるのかすら理解できなかった。
 いや、したくなかった。
 友香がちやほやされたいがために漫研に入ってきたことを、直哉はすぐに見抜いた。
 そこで直哉は今回の合同イベントを考えた。
 女子がいて、それでいてオタクなんていう好条件は探すのにとても苦労した。
 けど…
 

(苦労した甲斐があったなぁ)
 

 横目で奥沢友香の様子を窺う。
 彼女は立ち上がり、空になったグラスを持ってドリンクバーのあるほうへ向かったところだった。
 

※あとがき
『弱い姫君』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
本来は何か目的があって運営されていた組織も、後から入ってきたメンバーによっては雰囲気が変わったり、あるいは目的すらもあやふやになったり変わったりすることがあります。
それは自然のことだと流すのか。
それとも本来の目的に軌道修正するのか。
今回はそんなエピソードです。

あ、別に僕はどっちでもイイと思いますよん。
居心地がよければそれで。

※カカオのオススメ本たち
2015年自分的ベスト本ランキング10位~1位

最新刊を追っているラノベまとめ。どれも面白いよ!

ラノベ好きにオススメの一般作10冊まとめ

※物書きならポメラあるといいよ!ポメラ関係の記事はこちら
ポメラだって文字数ぐらい調べられるから!ポメラで文字数を調べる方法を解説してみた

ポメラは小説に向いているのかどうか考えてみた

僕がポメラを手放せないたったひとつの理由

ポメラDM100の使い心地について僕が思ったこと

物書き達よ、ポメラを持って部屋を出よう!

ポメラDM100を購入して1年経った僕が後から追加で買った3つの物


※カカオのツイッターアカウントです。日常ツイートから後追いゲーマーライフの模様まで色々つぶやいてます。お気軽にフォローしてください。

SPONSORED LINK