彼女はどうして僕なんかを選んだのか。短編小説『シケた旦那』

rikonya

 ホテルの前で彼女と別れてから一分も経たないうちに、LINEにメッセージが…

『今日は会えてうれしかったよ』

 彼女からだ。
 僕はすぐに返信する。

『僕もだよ』

『奥さんとわたしと、どっちと会えるほうが嬉しい?』

『もちろん君だよ』

『フフフッ、うれしい』

 甘いやり取りを交わししているうちに駅に着いた。
 22時を回った駅は、仕事帰りのくたびれた勤め人でひしめいていた。
 僕はその中をスッキリした気分で闊歩する。
 妻への言いワケを考えながら。 
 

       *
 

 僕と彼女と出会ったのは、三ヶ月前のことだ。
 そこらへんに転がってる社畜のように、僕もまた仕事疲れでゾンビのように歩いて、シケた居酒屋に入って安酒をあおっていた。
 呑まなければやってられないって。
 
 どうしてこんなに働いてるんだ。

 なんだって給料は上がらないんだ。

 そのくせ女房はちっとも優しくない。

 おおよそ自分の生活にいいところが見出せないでいた。
 そんなとき、彼女が僕の席の隣に腰掛けた。

「すいません、お隣よろしいですか?」

「え、あぁ……」

 ほかに席はないのかと店内を見回すと、学生らしき団体客が来ているらしく店の中はほとんど満席状態だった。
 それに、彼女は美人だった。
 二十代後半ぐらいだろうか。

 それが僕と彼女の出会いだった。
 相席などで親交が深まるわけがないと思って口をつぐんでいた僕だったけれど、彼女は積極的に話しかけてきて、気がついたら僕が自分の身の上話なんかをペラペラと喋っていた始末だ。
 彼女は話を聞き出すのが上手いのかもしれない。

 以来、僕と彼女はよく会うように、やがては密会するようになった。
 三十代後半で結婚している僕なのにいいのだろうか、と思うも、彼女は

「そんなこと問題じゃないよ」

 気にしてないようだった。
 僕もまた、気にしていなかった。
 妻は遅く帰ってくる僕になど見向きもしないし、むしろいないほうが独りの時間を楽しめると思っている節さえ窺える。
 気になるのは、なんで冴えない僕なんかと美人の彼女がこんな関係になれたのかは、未だに奇妙だと思っている。
 ルックスだって大したことはない。
 ま、いっか。
 

       *
 

 わたしは彼とのLINEのやり取りを終えると、今度は彼の奥さんにメッセージを送る。

『そろそろいいんじゃないんですか?』

 十秒も経たないうちに奥さんから返信が来た。

『もう少し証拠が欲しいわ』

『十分に写真や映像は撮ったと思いますけど』

 わたしとしては、彼と会えば会うだけギャラがもらえるから別にいいけど。かなりの額だしね。

『……それもそうねぇ。じゃあ今日の分のデータを送って最後にするわ』

『毎度どうも』

『ところで、うちの旦那の具合はどうだった?』

 また返信に困ること聞くねぇこの奥さんは。
 
『イイ感じでしたよ』

『ウソね』

『バレちゃいました?』

『バレるわよ。あたしはあの人の妻なのよ?』

 妻ねぇ。
 離婚したいがために女(わたし)をけしかけて、旦那に不倫させて証拠写真や映像を手に入れる女を、果たして妻と呼んでいいのかなぁ。
 ま、こういう女がいるから離婚屋のわたしがゴハン食べていけるだからいいけど。
 少し考えた後、わたしはこう返信しておいた。

『シケた旦那さんでしたね』

『でしょ?www』
 

※あとがき
『奇妙な愛人』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
あまり書かないタイプの話なんですけど、書いてて楽しかったですw
普段執筆しないからこそ楽しめたのかもしれないですな。
ちなみに『離婚屋』で検索してみると、普通に商売として存在していて驚きましたね…。

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