満員電車は嫌だけど……。短編小説『男祭りでイイんです』

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manin

(うへぇ……)

 駅のホームに着いた途端に、俺は溜息をついた。
 ホームは人でいっぱい。
 電車が少し遅れてるせいもあって、いつもの三割増しぐらいか。いつもが混んでるからその三割り増しともなると酷さも格別。

(そんな格別いらねーし……)

 できることなら電車が空くまで待っていたいとこだけど、そんなことしてたら学校に遅刻しちまう。
ただでさえ高二に進級してから遅刻が多いんだから……。

 ホームに滑り込んできた電車の扉が開く。
 ドドドッと人が吐き出され、
 ドドドッと人がまた呑み込まれていく。
 俺もその群に混じってどうにか電車に乗った。

 
       *
 

(野郎ばっかかよ……)

 俺の周囲は見事なまでに野郎、それもオッサンばっかだった。
 オッサンたちとのおしくら饅頭状態は、暑さも尋常じゃない。
 男祭り!
 なんて祭があったら、まさに今の状況を指すだろうな。
 通勤通学時間帯はいつも祭だよ。
 ただし、誰も楽しんじゃいないけど。
 あっ、このっ。
 こんな混んでんのに新聞広げてんじゃねえよ!

 
       *
 

(あぁ、生きてるってすばらしいいぃぃ)

 男祭り列車から降りて、俺は思わず深呼吸した。
 新鮮な空気が肺を満たしていく、ような気がする。
 ホームには人がたくさんいるけど、人が流れてるだけまだマシだ。
 ――と、
 

「ほら早く降りなさいよ!」

「だから僕はやってないってば!」

「うそ言うんじゃないわよこの痴漢!」

 
 オッサンの腕をつかんだ女が、俺が乗っていた隣の車両から降りてきた。
 腕を掴まれたオッサンはスーツ姿で、半ば引きずり出されるように電車から出てきた。

(マジか……)

 高校生とはいえ俺も男だ。
 気をつけないとな……。

 
       *
 

 翌日。

(さあ、今日も男祭りだぜ!)

 俺は半ばヤケクソ気味に男まみれの車両を自分から選んで乗った。
 新聞広げるぐらい許してやらぁ……。
 

※あとがき
『東京の男祭り!』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
満員電車はいろいろな意味で恐いです。
僕は可能な限り乗らないようにしてますね…。
 

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