彼らが揉めると人は迷う。短編小説『右と左の対立』

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 僕から見て右にいるアイツを、僕はどうにも理解できない。
 アイツは自由奔放で直感を頼りに行動するきらいがあるからだ。常に理性的に、そして計算高くあれ、という僕の立場とは対極にいる。
 いや、僕とアイツとでは立場が違うのはわかっている。立場というか、立ち位置というべきか。
 そうとはわかっているのだけれど、我々はしばしば対立する。
 これもまあ、わかっている。対立はいわば宿命なのだから。

 

「だからさー、オレは絶対に今遊びに行くべきだって思うわけよ!」
 右のアイツは力説している。
 僕は肩をすくめたい気分だった。『~すべき』と義務感にかられる理由は皆無である。
「君はそう言うが、その『行くべき』だという意味不明な義務感が生じるだけの理由がない。むしろ否定されるだけの理由なら山ほどあるが。今がどういう時期かわかっているだろう。テストまで残り三日なんだぞ。前回の中間テストの成績を忘れたとは言わせないからな」
 前回の中間テストは忘れたくも忘れられない。あの惨憺たる結果を教師から突きつけられたとき、僕は己の無力さを思い知った。もうこれ以上、右にいるアイツの好きなようにはさせない。
「まーたそれかよ。テストの成績悪くたって死にゃあしねーよ」
 右のアイツはすでに中間テストの成績など忘却の彼方らしかった。
「僕は死ぬと思う。学歴社会は死んだと言われているが、実はそうでもない。未だ高学歴の者に対する尊敬の念は消えてはいないんだ。もし勉強をなまけてろくな学歴も残せなければ、今は死ななくとも将来的には食いぶちに困窮して死ぬ可能性はある。僕はFランだとかバカにされたくはない」
「カラオケ行こうぜ!」
「人の話を聞け!」

       *

 オレは左にいるヤロウの態度が気に入らねえ。今に始まったことじゃねえけど。
 なんだってアイツはこう物事を固く神経質に捉えちまんだ。今遊ばなくてどーすんだよ。人間いつ死ぬかわからねえんだぜ?
 思いたったら即行動。
 なのにヤロウときたら義務感がどうだの学歴がああだのとやかましい。そんな遠い未来の話なんぞ持ち出されてもピンと来ねーっての。
 テスト?
 はっ。そんなもんは、このオレの第六感でどうにかしてやるさ。
 選択問題限定だけど。

       *

「うーん……」
 どうにも勉強に集中できなくて、私は机の上で頭を抱えた。
 中学の期末テストまであと残すところあと三日。勉強はあんまり進んでない。
 なのに遊びたくてうずうずしちゃって集中できない。
 でも、今勉強しないと酷いことになることも頭ではわかってるんだよ。中間テストの成績、酷かったからねぇ……。あれでお母さんと世界大戦ばりの喧嘩をしちゃったし……。
 そういう冷静な部分が私の頭の中のどこかにあって、遊びに行っちまえよ! と私を惑わす心をどうにか押さえつけているような具合がずっと続いている。
 なんだか頭の中で右脳と左脳が喧嘩してるみたいな気分だよ。
「あー、カラオケ行きたいなぁ~……」
 わたしはひとりごちて、それからまた勉強に戻った。

 

 

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