父親の職業についてどれぐらい知ってる?短編小説『オヤジの育毛剤を使った結果』

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 諸事情により、ツルッツルになってしまった。スネが。
 その事情とやらがまたなんとも下らない。
 文化祭で俺のクラスは女装喫茶をやることになった。あんまりな出し物だったが、なにせ高校最後の文化祭。誰も彼もがどこかおしかしなテンションだった。
 クラスの方針としてスネ毛は全剃りすることになった。どの衣装もスカートが超ミニだからだ。女子高生やらサンタクロース(ミニスカの)やらミニスカポリスやら。
 ちなみに俺はメイドだった。
 スカートはもちろん超ミニ。黒いソックスを着用したのだが、よく考えてみればメイドはやっぱりニーハイだとなと今更ながら思った。
 ニーハイならスネ毛を剃らずにすんだし、ホント今更だぜ……。
 
 

 で、俺が今自分の部屋で夜な夜な何をしているのかというと、スネ毛の復活儀式である。
 具体的に、オヤジの育毛剤を振りかけている。
 どうにもツルツルなのは嫌だった。男も剃る時代だけれど、俺は好きになれん。かと言って剛毛がいいわけでもないけど。
 さて。
 スネに育毛剤を振りかけたものの、ヒンヤリとするだけで取り立てて効果は感じられなかった。ほんのりとミントめいた香りが漂っている。
 当たり前か。
 振りかけたそばから毛が生えてきたら、世の中からハゲはいなくなっているだろうしな。
 だが、変化はすぐに訪れた。
 スネから生えてきたではないか。
 
 
 
 

 氷柱が。
 
 
 
 

「あぁ!?」
 なんだこれはいったいどゆこと!?
 スネから続々と氷柱が、まるでスパイクの如く何本も生えてきた。
 最初は小さな粒のようだったのだが、にょきにょきと先を尖らせた氷柱がおよそ十センチほどの高さにまで成長を遂げた。
 俺はその様子を呆然と見るしかなかった。
 そのとき、俺の悲鳴を聞きつけたのか誰かがドアを開けて部屋に入ってきた。
 オヤジだった。
 オヤジは真っ青な顔で俺のスネを見ている。
「オマエが勝手に持ち出したのか……」
「お、オヤジ! これなんだよ! 育毛剤じゃないのかよ! 瓶にも『育毛』って書いてあるぞ!」
「それは育毛剤ではない。パッケージはカムフラージュにすぎん。それは本来『深夜の血』で戦う前に盾や甲冑の肩当てなどに振りかけて防御と攻撃性を備えさせるために使うんだ」
「盾、甲冑?」
 何を言ってるんだこのオヤジは……。
 それに深夜の血って何だよ……。
「仕方あるまい。今夜の『深夜の血』にはオマエに出てもらう。その脚を武器にして敵を叩け。蹴りでとにかく攻めるんだ」
「ちょっ、待て待て、それってだからなんだよ!」
「『深夜の血』とは、毎晩のようにこの街で行われる地下異世界格闘技のことだ。この街の地下には別の世界があって、我々はそこで毎夜、観客の前で戦い、ファイトマネーを得る。この家の生活費やオマエの学費も全て俺のファイトマネーで出している」
「うそぉ!?」
 そういやオヤジの職業って知らなかったな……。
「んじゃあこの変な育毛剤も異世界の?」
「もちろんだ」
「マジか……」 
「さあ出かけるぞ。あと一時間もすると『深夜の血』が始まる。オマエには稼いでもらわないとな」

       *

 そんなこんなで、俺は氷柱だらけとなったスネを武器にして戦うことになった。
 良い子のみんなは父親の育毛剤を勝手に使ったりしないこと。
 それと今すぐに父親の職業を確認しておくことをオススメする。
 

※あとがき
『寒い育毛』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
ザクはもっと肩のスパイクを生かして旧ザクのようにタックルで戦うのがよろしいかと。
そんなことを思いつつ執筆しました。はい。
 

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