生徒会室に侵入した彼の動機とは?短編小説『侵入成功』

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「動機はなんだ、答えたまえ。伊勢原(いせはら)くん」
 所構和逗高校(ところかわまずこうこう)、その生徒会室にて、生徒会長の加西(かさい)サヤカはひとりの男子を尋問している。
 彼の名は伊勢原ユウタ。
 ちなみに今のユウタは、パイプ椅子に座らされロープでグルグル巻きに縛られている。
 彼はサヤカの問いかけにずっと黙秘を続けている。
 なぜこんな状況になっているのか。
 それは三十分ほど前にまでさかのぼる。
 サヤカが放課後、生徒会室に来て自分の席に座ってみると、爪先が何かにあたった。
 机の下を覗き込んで見ると、伊勢原ユウタが丸まっていたというわけだ。
 彼とは直接話したことはないが、同じクラスということで名前と顔は一致している。
 だが、それだけの関係だ。
 サヤカはすぐさまユウタをボコボコにし、背負い投げで完全に昏倒させた末、ロープでグルグル巻きにした。なぜ生徒会室にロープがあるのかは謎である。

       *

「さあ、答えたまえ。なぜ君は生徒会室に侵入などした。自慢にもならないが、この部屋にはろくなものがないぞ」
 たしかに自慢にもならなかった。なのにサヤカはなぜか胸を張っている。
「……そんなことはない」
 小さな、とても小さな声で、ユウタは反論した。
「なんだと? 今の言から察するに、貴様は何か目当てのものがあって侵入したということだな」
「ハッ」
 ユウタがしまったとばかりに目を見開いた。黙秘はするがポーカーフェイスはできないらしい。
「フフン、では訊こう。何が目当てで貴様は生徒会室に忍び込んだ。動機を吐け」
「……僕の動機は」
 
 
 
 

 アンタだよ。加西サヤカ!
 
 
 
 

 ユウタが半ば叫ぶように答えた。
 サヤカがポカンと口を半開きにしている。
「ぼ、僕は、ずっと前から加西のことが好きで……今日こそは告白しようと思ったんだ。それで生徒会室に来てみたんだけど誰もいなくて、そうしたらいきなりドアが開いたんで慌てて机の下に入ったんだ……」
「そ、そうだった、のか」
 サヤカは頬を赤くして、どうにかそれだけ口にした。

       *

「どうにか切り抜けたか」
 ユウタは生徒会室を後にし、額に浮いた汗を拭う。
 とりあえず告白の返事は後日にしてくれとサヤカに言われ、解放されたのだ。
 意外な展開にはなったけれど、もしかするとあの様子なら上手い具合に付き合えるかもしれない。
 そうすれば、堂々と生徒会に接近できる。
 ユウタはほくそ笑んだ。
 彼は新聞部で、生徒会のスキャンダルをすっぱ抜こうとしている、いわばパパラッチ。
 生徒会に侵入したのも盗聴器を仕掛けるためだったのだが、運の悪いことに生徒会長その人に見つかってしまったというわけだ。
 ただ、咄嗟に利かせた気転のおかげで難を逃れるどころかチャンスがめぐってきた。
「いいね、どんな秘密を握ってるんだかな、生徒会。楽しみだ」
 

※あとがき
『僕の動機』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
実際のところ生徒会ってどんなところなんでしょうね。僕の学生生活はそういうのとは無縁で、というか無縁であろうとしていたのでよくわかりません。もし二次元のような生徒会ならば喜び勇んで生徒会長に立候補してたと思いますが、まあ、現実はきっと違う…。

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