世界でただ独りの小説家? 短編小説『世界から自分以外の小説家を消してみた結果』

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 私の小説はあまり面白くないらしい。友人知人に読ませても反応が薄いし、ネットにアップしても評価されない。
 初めて書いた作品が自分としては最高の出来だと思い、様々な人に読ませたのだけれど、誰も彼もが面白いと言ってくれない。
 私は頭を抱えた。
 

 ある友人が言った言葉が私の胸に突き刺さった。
「君の作品を読む時間があったら、○○先生の作品を読んだほうが優位意義だよ」
 彼はその○○先生とやらのファンらしく、僕の小説そっちのけでその小説家がいかに素晴らしいかを延々と語った。
 その作家以外にも、好きな作家はいるらしかった。
 ほかの作家。
 それはつまり、僕以外の小説を書く人間ということだ。
 

 私は旅に出た。
 世界中を巡りに巡って、ついに某国にて伝説の秘宝である壷を見つけた。
 その壷の中に願いごとを叫べば、願いが叶うというのである。
 私は叫んだ。
「私以外の小説家はこの世から消えてくれ」 
 私以外の小説家はこの世からいなくなった。
 つまり私はこう考えたのだ。
 相対的に評価されてしまうから私の作品の評価が下がるのだ。ならば、比較対象を全て消し去ればいい、と。
 

 だが私の思惑通りにはいかなかった。
 久々に新作を書いて友人に見せたのだが、彼の表情はあまり愉快なそれではなかった。
「君の作品を読むぐらいなら、○○監督の映画を見たほうが有意義だよ」
「…………」
 私はこの世界の全ての映画監督を消すことを願おうと、再び壷のある場所へ向かった。
 壷に向かって願いを言いかける。だが、中途半端に開いた口を壷に向けたまま、私は固まってしまう。
「…………」
 たぶん、無駄だろう。
 映画監督がいなくなったら、今度はアニメに走るかもしれない。
 アニメを消し去っても、今度は絵画の鑑賞に目を向けるかもしれない。
 絵画を消し去っても、野球の観戦に東京ドームに行ってしまうかもしれない。
 じゃあ世界の娯楽という娯楽全てを消し去ったら……と考え、私は首を振る。
 世界に唯一の娯楽として存在する私の小説が、果たして面白いと受け入れられるかどうか自信が持てなかったのだ。
 今になって、ようやく自分のレベルの低さがわかった。
 私は叶えてもらう願いを変えた。
「この前の願いを、なかったことにしてくれ」
 世界の小説家達は生き返り、私はまたほかの作家たちと比べられる環境に身を投じた。
 唯一書いた一作を読み返してみたが、出来栄えはいまいちだった。なぜこの作品をあれほどまでに自信を持って他人に読ませていたのか理解ができない。穴があったら入りたい。
 私は今、たくさん読んでたくさん書いている。
 結局のところ、そうやって日々を積み重ねていくことが小説の正しい上達法なのではないか。
 そういう結論に私は至った。
 

 

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