世界を救った勇者は魔界を滅ぼそうとするが…。短編小説『勇者逆転』

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 人間界を征服しようとしていた魔王を、勇者クレイドはついに倒した。
 世界は歓喜し、クレイドを英雄と称えた。
 クレイドは民の前でこう宣言した。
 
 
 

「これで戦いが終わったわけではない。未だ魔界は存在しているのだ。俺の戦いは、魔界を滅ぼすまで続くのだ!」
 
 
 

 勇者クレイドは宣言どおり、魔界の制圧にかかった。
 来る日も来る日も魔物を倒し、屠り、惨殺した。
 魔界に拠点がわりに城も建てた。
 クレイドの勝利を誰もが確信した。
 だがある日、形勢は逆転した。

       *

 ひとりの魔族の少女がクレイドの城に侵入した。
 彼女は配下の者たちを次々に斬っていき、とうとうクレイドの元まで辿り着いた。
「見つけたわ、魔王クレイド!」
 彼女はクレイドを指差しそう声を荒げた。
「俺が魔王? ふざけるな、俺は勇者だ」
「世界を滅ぼそうとしている者が、勇者なわけがないでしょ! 勇者は世界を救う者を指すの。そして今の勇者はこのわたし」
 そう言うや否や、勇者と名乗る魔族の少女が斬りかかってきた。
 クレイドは応戦するも、勇者の俊敏な動きについてけない。
 否。
 勇者の俊敏さだけでなく、クレイドが肥えたことにも原因があった。
 魔界に城を構えてから、玉座に座り、部下の報告を聞くだけの日々が、知らず知らずのうちに当たり前となっていた。
「くっ……」
 少女の太刀筋は見事なものだった。
 まるで昔の自分を相手にしているような錯覚さえ覚える。
 そして、
「ガアアァ!!」
 少女の剣がクレイドの首をとらえた。
 倒れ伏すクレイド。
 彼の耳に、少女の勝利宣言がぼんやりと聞こえてくる。
「魔王を討ち取ったぞー!!」
 と。
 クレイドは思う。
 お前も魔王化しないよう、せいぜい用心するんだな、と。
 

※あとがき
『興奮した正義』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
立場の違いで勇者にでも魔王にでもなっちゃうってことです。
あまり関係ないけれど、子供の頃、父親が帰ってくるのはいつも夜の10時とか11時で、そのたびに「あぁ、あんなふうに働きたくないなぁ」と思ってました(遠い目)
 

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