男なので男子更衣室に入ったのだが…。短編小説『いっぱいの罪人』

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「待ってくれ! 冤罪だ! こんなの絶対におかしいって!」
 俺は腹の底から声を出して叫んだが、その場にいた誰もが白い目で見返してきた。
 ここに男は俺以外にひとりもいない。
 全員が女子である。
 ここは更衣室。
 俺は床に正座させられ、女子たちに囲まれている。
 なんだってこんなことに……。
「罠だ罠。これはきっと陰謀なんだ!」

       *

 高校に入学し、晴れ晴れとした気分だった。
 この学校は去年まで女子校であったため、男子は全校生徒のわずか1%にも満たない。
 おいおい天国じゃねーかよ。
 などと心躍らせ日々を過ごし、そして今日、俺は胸躍らせていた自分がとんだ間違いを犯していたことに気付いた。
 女って、こえぇぇぇ……。
 体育の授業なので俺は意気揚々と更衣室に向かった。机にかじりつくより身体を動かしていたほうが好きだ。
 さー体育だ体育だ。
 扉を開ける。
 すると、
 
 
 
 

 二十人以上もの女子が着替え中だった。
 
 
 
 

 馬鹿な。
 たしかにここは男子更衣室だったはずなのに。
 俺は逃げようとしたものの、女子達に取り押さえられ、ボコられた末にこうして尋問されている。
「コイツ、どうしよっか」
「ねぇ」
「女子と男子の更衣室間違えるとかありえないし」
「埋めちゃう?」
「あはっ、それいいかも!」
 何やらウキウキとした様子で恐ろしいことを話している女子達に、俺は戦慄する。
 女子校が恐いとこだなんて都市伝説だと思ってたぜ。

       *

 女子たちの誰もがこの事態の真相に気付いていた。
 そして内心でどう対処するか焦ってもいた。
 なぜなら、
 
 
 
 

 ここにいる女子全員が更衣室を間違えたからだ。
 
 
 
 

 真実はこうだ。
 この正座させられている男子が正しくて、女子全員が男子更衣室に堂々と侵入していたということになる。ずっと女子校で、この更衣室も元々は女子が使っていた。彼女たちは少数の男子のことなどすっかり失念し、いつもどおり入って着替え始めてしまったのだ。
 どう考えても自分達が悪い。
 が、
 女子たちが互いに目配せする。
 そして、誰もが静かに頷く。
 こうなってはもう後戻りはできない、と。
 男子は彼女たちの様子にいっそう怯えの表情を浮かべた。
 女子たちは、男子にどのような罰を与えるのか話し合ったのだった。
 

※あとがき
『悔しい罪人』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
自分で書いてて思ったけど、これはさぞかし悔しいだろうなぁ…。
 

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