お見合いをすることになったのだけれど……。短編小説『アンドロイド婚』

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「お見合い、でございますか」
 わたしはお父様に聞き返してしまった。常ならば王であるお父様の言うことはなんであれ快く返事を返すわたしなのだけれど、まさかのお見合い発言に驚いてしまった。
 お父様は鷹揚に頷いてみせる。
「そうだ。お前ももう結婚を考えても良い年頃。一国の姫がいつまでも独り者では示しがつかんだろう」
「そ、そうでございますわね」
 わたしは冷や汗をかいた。
 ついにこのときが来てしまったか。

       *

 自室に戻り、天蓋付きのベッドに腰を下ろした。
 それからわたしは右腕を、
 
 
 
 

 根元から外した。
 
 
 
 

 根元の部分の稼動具合が少し悪いと思っていたけれど、なんてことはない。稼動ギアの一部が磨耗していただけだった。わたしはすぐに処置を施した。
 それからまた右腕を胴体にはめた。ガッシャンと小気味良い音を響かせ、ドッキングは完了した。
 わたしは、未来から来たアンドロイドだ。
 今は姫君と呼ばれているけれど。

       *

 一年ほど前のことだ。
 わたしは五千年後の未来でタイムゲートの実験用アンドロイドとして働いていた。それがわたしの義務だった。そのことに対し、アンドロイドであるわたしには取り立てて不満はない。なにせわたしはワンドロイドなのだから。
 その実験中にトラブルが発生した。
 時空の波が突如竜巻の如く渦巻き、わたしは時間の波に呑まれ、この時代のこの部屋に飛ばされてきた。
 そのとき、突如現れたわたしに驚いたのが、本来の姫だった。彼女の悲鳴で誰か来てはたまらないと、わたしは彼女の息の根を止めた。
 それから元の時代に帰ろうとしたものの、ゲートは開いてくれなかった。この実験は失敗したようだ。失敗の恐れがあるからこそ、人間ではなくアンドロイドを使ったのだろう。
 しかし困ったことになった。
 こうなってはここで暮らすしかないのだが、違う時代のわたしがどうやって生活していけばいいのか。
 途方に暮れていたわたしの目の前には、姫君の死体があった。
 これだ。
 わたしは姫の肉体に自身を溶け込ませ、アンドロイド化させた。肉体に機械を埋め込むなどという芸当は初めて行ったが、思いのほか上手くいった。時折、血肉が稼動ギアの調子をおかしくすること以外は、取り立てて不便はない。
 だが、もうひとつの不便に、ほどなくしてわたしは気付いた。
 不便という言い方は違うか。欠点だ。欠損だ。
 
 
 
 

 わたしには、生殖行為ができない。
 
 
 
 
 
 何せアンドロイドなのだから。だからお見合いは恐怖でしかなかった。
 自分が人間ではないことが露見したらどうすればいいのか。
 いっそ全ての人間を滅ぼすことも視野に入れたほどである。

       *

 しかしお見合いは意外な結果を見せた。
 相手方の王子もまた、アンドロイドだったのだ。
 彼もまたわたしのようにタイムゲートの実験台用のアンドロイドだったのだが、やはり実験は失敗に終わり、そしてこの時代に放り出されてしまったのである。
 そしてこれもまた偶然なのか、彼は王族の家に降り立ち、その場にいた王子を殺し、彼の肉体を得たという。
「まさかこの時代でアンドロイドに出会えるとは」
「驚きですね」
 わたしたちは互いに驚いた。
 それからほどなくして婚約、結婚する運びとなった。
 子供について周囲からは期待されているのだが、のらりくらりと誤魔化し続けている。
 いやだって、わたしだけの責任じゃないし。
 

※あとがき
『斬新な姫君』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
時間跳躍はいつできるようになるのかしらん。あるいは既に未来人が現代に紛れ込んでいるのかしらん。
 

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