ぼくたちはずっとひとつのボールで遊んでるよ。短編小説『ひとつのボールでできること』

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 ドッジボール、サッカー、キックベースなどなど。
 いっこのボールでできることを、ぼくたちクラスの男子はいろいろためした。
 さいしょはたのしかった。
 ドッジボールはボールをよけるのも当てるのも。
 サッカーはドリブルであいてをぬくのがすき。
 キックベースはとにかく遠くにボールをけりとばせるからスッキリする。
 でも、毎日毎日そんなふうにしてあそんでいたら、あきてきた。
 ぼくたちには、いっこのボールしかないから。
  

 だから、あたらしいアソビをかんがえてみた。
 それがこの、ドッジサッカー。
「くらええぇぇぇ!」
 タクミくんがおおきなこえでそんなことをいって、ボールをけった。
 とんでいったボールを、陣地の中にいるほかの男子たちがよける。
 あたったら外野にいく。
 ドッジボールとサッカーを合わせたアソビだよ。
 でもぼくはちょっとふあんだった。
 だって、このアソビにあきたら、つぎはなにしてあそぼうかなって。
 ぼくたちには、いっこのボールしかないから。

       *

 研究室で、ひとりの白衣姿の男が子供たちの様子をモニターで眺めている。
 そこへ別の研究員の女が入ってきた。
「どうですか、子供たちの様子は」
 女が訊ねた。
「一つのボールでできることを模索し始めたようだ。見てみたまえ。今はドッジボールとサッカーを足して二で割ったような遊びに興じているよ」
「それはそれは。順調のようですね」
「あぁ」
「しかし、子供の考える力を養うとはいえ、こうして子供を隔離してボールをひとつだけ与えるというのはちょっと……」
「それはわたしも同意見だよ。ただ、別に永久にというわけではない。ほんの五年さ」
 当たり前のように答える研究員に、女は戦慄した。
「最終的にはひとつのボールで何をしでかすか、僕は楽しみで仕方が無いよ」
 男はほくそ笑み、モニターに注目する。
 子供達はドッジボールとサッカーを足した遊びに飽きて、今度はドッジボールと鬼ごっこを足したような遊びを始めていた。
 鬼の子が、逃げ惑う子供にボールを投げ、当たれば鬼らしい。
 次は、何をしてくれるのだろうか。
 

※あとがき
『臆病なサッカー』というお題を元にして書いた即興小説です。今回は全く修正してないです。
日本人は働きすぎとよく言われてますが、要は一人の人間でどれほどのタスクをこなせるのか、その限界に日本人はチャレンジしている(あるいはさせられている)のではないですかね。ほとんどの働く人が「させられている」ように思えてなりませんが。
…次は明るいお話をアップしたいと思ったのでした(苦笑)

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