バレンタインの舞台裏。短編小説『今年の収穫は如何ほどですか?』

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 本日はバレンタイン。嫌な季節がやってきたもんだぜ。
 俺は辟易とした気分で通っている高校に登校した。
 自分の席に座り、ふと思い立って机の中を覗き込んでみる。
 どうせないに決まってる。それなのにこうして期待してしまうのは、モテない男の性だろうな。悲しすぎて涙無しでは語れないぜ……。
 だが俺が悲しみに暮れるような悲劇は起きなかった。
 なぜなら、机の中には明らかにチョコと思しき箱が入っていた。
 ピンク色の包装紙と赤いリボンできれいにラッピングされている。箱とは別に封筒もあったので、中の便箋を取り出して読んでみる。そこにはこう書かれていた。
 
 
 
 

『このことは内緒にしておいてください。いいですね、秘密ですよ。君島ユリカ』
 
 
 
 

 君島、ユリカ……だと。
 その名を知らぬ者はこの学校にはいないだろう。
 学内屈指の美少女にして生徒会長。眉目秀麗と書いてキミシマユリカと読むのではなかろうかと思うほどにパーフェクトな存在である。
 そんな彼女が俺に、チョコを……?
 うおおおおおおおおおおおお!!
 と、叫びたくなったが、俺は抑える。
 何せユリカ様との秘密だ。絶対に守らねば。
 ていうか、来月のホワイトデー何にすりゃいいんだ!?
 これが義理なのか本命なのかわからねえけど、お返し次第じゃチャンスはある!
 俺は気合を入れ、ホワイトデー対策に乗り出した。まずはバイトして金貯めるところからだな。

       *

「ユカリ様、今年の〝収穫〟は如何ほどで?」
 放課後。
 生徒会室で、副会長の新堂エミリに訊かれ、ユカリはニィと微笑む。
「そうですわねぇ、ざっと150人に配りましたけど、前年比10%アップといったところかしら。チョコの数自体は去年とほぼ同じなんですけど、チョコをより安く粗末な物に変えましたので、そこで儲けが出るというカラクリです」
「まあっ。でも大丈夫なんですか? 安物のチョコでは男子たちも不満なのでは?」
「問題ありません。彼らはチョコの味ではなく、誰からチョコをもらったかを重要なファクターと捉えているのです。たとえ安物の板チョコを溶かしてハート型にしただけの代物でも大喜びですわ」
「なるほどぉ」
「今頃、ホワイトデーのためにどんなプレゼントを用意すればいいか右往左往しているところでしょう。アルバイト探しにひた走っている人もいるかもしれませんね」
「でも大変だったのではありません? チョコを150人分も用意するのは」
「全てうちの屋敷に出入りしてる手伝いの者にやらせましたわ。わたしが用意するのはただひとつのチョコだけよ」
 ユカリはそう言うと、おもむろにチョコを差し出した。
 エミリに。
 彼女は頬を赤らめ、ユカリのチョコを受け取る。
「クラスの男子からの贈り物はどうします?」
「気が早いですわエミリ。でもそうねぇ、例年通り、気に入った物は取っておき、あとは全て売却してしまいましょう。そのお金で旅行にでも行くのはどう?」
「まあ素敵!」
 ユカリとエミリは楽しそうに笑った。
 

※あとがき
『商業的なカリスマ』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
こうやって「バレンタインデーなんて裏はこんなんだぜ?」と裏事情を捏造してバレンタインデーに関係ない自分は安全圏にいるぜアピールをしているわけではありませんですはい。
 

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