見つけたダンボールに入っていたのは……。短編小説『夢の残骸』

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 引越しのため、俺は部屋の整理に取り掛かっていた。かれこれ五度目の引越しなので手馴れたもの……と言いたいところなんだけど、全然手馴れてなんてねぇ。
 物が多い。
 とにかく、物が多い。
 そんな数多くある雑多な物の中から、俺はクローゼットの奥に隠されたようにしまわれたひとつのダンボールを見つけた。なんだっけコレ。
 不思議と嫌な予感がするのはなぜだろう。
 でも好奇心が勝り、俺はガムテープをはがして箱の封印を解いた。
 後悔した。
「あー……そういやこの箱って……」
 
 

 箱の中には実に色々な物が収納されていた。
 ノートパソコン、楽譜、ゲーム機、カット鋏、彫刻刀。
 順に説明すると、ノートパソコンは小説家を目指したときに買った。
 楽譜は、ピアニストを目指したときに買ったもの。
 ゲーム機はプロゲーマーを目指したときに買ったもの。
 カット鋏は美容師を目指していたころに使っていたもの。
 彫刻刀は……言わなくてもわかるだろ? 彫刻家を目指していたころに買ったものだ。
 まあ、全部挫折したわけだけど。
 挫折するたびに、俺はこのダンボールの中に使っていた物を放り込んでいた。いわばこのダンボールは俺の夢の残骸を埋葬する墓のようなものである。
 いやぁ、すっかり忘れてたぜ……。
 
 
 
 

 そして俺は、新たにニッパーをダンボールに投げ込んだ。
 
 
 
 

 プロモデラーになろうとしたんだけど、またダメだった……。
 とあるイベントで見かけたプラモの完成度のあまりの高さに触発されたんだけど、どうにも思うようにならなかった。
 それから俺はダンボールを再びガムテープで封印した。
 夢を挫折するたびに墓は膨らむ。
 そのたびに俺は引っ越す。
 新たな地で、俺はまた新しい夢を見る。
 今度こそ……!
 俺は、部屋の片隅に立てかけてあるエレキギターをちらりと見る。艶やかで、きれいな木目だった。
 

※あとがき
『箱の中の屍』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
僕も『小説家になる』という夢を追いかけてはいますけど、小説を書くことそのものが好きなので、挫折とかそういうのとは無縁かもしれません。ゲームやアニメと同じで、僕の大切な趣味でもありますしね。思うに、小説を書いている時点で誰だって小説家なんだと思います。商業かそうでないかという差は、まあデカイですけど。
 

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