ファンタジー的地上げ屋。短編小説『不動産魔術師』

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「焼き尽くせ……アウィス・イグネア!」
 魔道士がそう唱えるや、虚空に裂け目ができ、そこから炎をまとった怪鳥が現れた。怪鳥は火の粉を撒き散らしながら家々を蹂躙する。
 燃え盛る家屋の中から次々と住民が逃げ出してきた。村人たちが外へと非難するのを確認し、魔道士はさらにもう一羽の怪鳥を呼び出し、村を焦土と化した。

       *

「どうだ、これで土地を売る気になっただろう」
「何が売る気になっただ! 鬼! 悪魔っ!」
 僕に向かって村人たちが罵詈雑言を投げかけてきた。
 やれやれ。
「僕だって好きでこんな疲れることをしたわけではない。君たちがあまりにも強情な上に、あまつさえ古代兵器を復活させようなどとするから悪い」
 僕がそう口にした途端、村人たちの間に動揺が走るのがわかった。誰もが口をつぐんでいる。嘘の下手な連中だ。
「そもそもこの村の土地を全て買い取るのも、この土地の地価に眠っている古代兵器を掘り出し破壊するためなんだぞ」
「そ、そんなこと言ったって、じゃあオラたちはどこに住めばいいだよ!」
 村人のひとりが声を荒げた。
 ごもっともではある。
「安心しろ。ちゃんと用意はしている」 

       *

「ここが君たちに用意した住居と住まいだ。好きに使ってくれたまえ」
 村人たちは口をポカーンと開けていた。
 僕が連れてきた場所は都市部の西区域の一画だった。
 小奇麗なレンガ造りの家が軒を連ねている。村人たちが住んでいた簡素な掘っ立て小屋とは雲泥の差である。
「ほ、ホントにここにオラたちが住んでいいんか? 法外な家賃とか払ったりはできねーぞ!?」
「安心していい。家賃は取るには取るが、君たちが村にいたころに支払っていた家賃に比べれば安いはずだ」
 僕が金額を示すと、村人たちにどよめきが起こった。無理もない。
 村にいたころの家賃よりも半値ほどだからね。
 村人達は喜び、早々に契約、引越しを始めたのだった。

       *

「上手くいったようだね」
 事務所に戻り上司に報告すると、彼は僕をねぎらってくれた。
「はい、村人たちも喜んでいましたよ。幽霊屋敷とも知らずに」
「あそこの物件はずっと借り手が現れなくて困っていたからな。まさかこんな使い方があるとは思わなかった。土地も買い取ることができて、まさに一石二鳥だ。しかしあそこの幽霊は性質が悪い。中には呪い殺してくる亡霊なんかもいるという話だ。魔道の心得がない者たちでは手に負えないのではないか?」
「そうなったらそうなったときです。また別の村から借り手を引っ張ってきますよ」
 

※あとがき
『破天荒な不動産』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
やってることは地上げ屋だよなぁとか思いつつ書いてたのを覚えている(苦笑)
 

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