暗殺者の初仕事だったのに……。短編小説『闇に身を潜めたら逆に目立ってしまった』

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anmakumedatta

 初仕事ということもあって、俺の心臓は破裂すんじゃねえかと思うほどに鼓動を強く打っている。ああクソッ、バクバクうっせーなぁ。
 ……ただまあ、とりあえずだ。
 暗殺者としてようやく一人前として認められたのは嬉しい。
 ずっとタダ働きでやめちまおうかと思っていたけど、ようやく努力が実ったってわけだ。組織もやっとギャラが出る仕事を俺に回してくれたんだぜ。
 
 

 そんなこんなで俺はこの真冬のクソ寒い真夜中、商店街の商店と商店の間の路地に身を潜め、さらに暗幕をかぶって自分の身を隠していた。暗幕が少しだけ寒さを紛らわせてくれている。でもこいつの役目は寒さ対策ではなく、あくまでも身を隠すための手段だ。
 暗がりでひとたび暗幕を被れば、そこはただの闇にしか見えない。通行人がたまに通るが、誰も俺の存在には気付いていない。
 俺は視線を前方に移す。
 目標は向かいの雑居ビルに事務所を構える不動産屋の取締役。
 ヤツに恨みを抱える人間は多く、その被害者たちが金を出し合ってうちの組織に暗殺を依頼してきた。被害者のためにも、失敗はできねえ。
 俺はじっと身を潜め、雑居ビルから取締役の野郎が出てくるのを暗幕の僅かな隙間から窺っていた。こうして闇に包まれていると、俺も一人前になったなぁって思うね。

       *

 突如視界が明るくなり、俺は目を開いた。
 目を、開いた?
 ……やっべ。
 
 
 
 

 俺、寝てたわ。
 
 
 
 

 目の前には複数人の男たちの脚が見えた。見上げたくはない。
「ワシを狙っていたようじゃが、とんだ間抜けな暗殺者もいたもんじゃのう」
「全くですね社長。暗幕なんて身体にまとっても、昼間じゃ逆に目立つってもんです」
「俺はでっけー犬の糞でもうっちゃってあるのかと思いましたぜ」
 ダハハハハハと男たちの嘲笑が木霊した。
 その中に取締役と思しき男の声も聞こえた。
 気付かれてたのか。
 まあたしかに、夜が明けてしまえば暗幕かぶった人間なんて目立つこと極まりないよな……。
 ていうか朝まで寝過ごしたとか、阿呆すぎる。
「さて、この暗殺者をどうするかのう」
 取締役が不穏な声を漏らした。
 ボキバキと拳を鳴らす音がそこかしこから聞こえてきた。
 ……ノーギャラでいいんで、俺を雇ってみませんか、社長。
 

※あとがき
『漆黒の闇に包まれし暗殺者』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
いかにも中二なお題なんですけど、そこを阿呆っぽく書いてみました。寝落ちするとろくなことがないという反面教師。
 

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