なぜ昼ごはんは不味いのだろう。短編小説『弁当は悪くない』

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「ううむ」
僕は持参した弁当を食べながら首を傾げる。あまり美味くないのだ。
もっと言ってしまえば、駄作だ。小説家が原稿用紙をクシャクシャにして棄ててしまう気持ちがちょっとわかってしまった。
せっかく早起きして作ったってのに……。
昼休みになったので、僕は会社を出て近くの公園へと足を延ばした。ベンチに座って景色を眺めながら食べたら美味しいかと思ったが、そうでもなかった。
なぜだろう。
実はここのところずっとこの「昼メシ不味い現象」に僕は悩まされている。別に弁当に限ってのことではなく、何を食べても美味しく感じられない。だが朝と夜はそんなことはなく、とても美味しく食事をとっている。
僕は元々食欲旺盛なほうで好き嫌いもない。食事を出されれば余程のゲテモノでない限りは美味しくいただける。
……はずだったのだが。

「よう、立川じゃん」
誰かが僕の名前を呼んだ。声の出所を見やると、大学時代にサークル仲間だった熊野が立っていた。スーツを着て、髪型はやけに落ち着いた具合の黒髪だった。学生時代は金髪に近かったほど明るい髪色だったのだが。こいつも社会人になったんだなーと僕は感慨深い思いにかられた。
「おっす。久しぶり」
「おう、おひさー」
「熊野の職場ってこの辺なのか?」
「いや、今日は外回りで立ち寄っただけ。昼飯の時間になっちまったからコンビニで弁当買ってここで食おうと思って。立川の会社はこのへん?」
「うん、すぐ近くだよ」
「そっかそっか。昼飯いっしょにいいか?」
「もちろん」
熊野が僕の隣に座り、弁当を食べ始めた。
ふたりで学生時代の話をしたり、仕事の愚痴を言い合っては「わかるわー」とか共感したり。そんなやり取りをしているうちに、僕は意外な事実に気付いた。
弁当が、美味い。
なんだろう、味そのものに変化があるわけではないのだが……。
そこで僕は気付いた。
気分だ。
僕は今、熊野といっしょにメシを食っている。これだ。
なんだ、単純な話だったんじゃないか。朝と夜は家族とご飯食べてるからなぁ。

弁当を食べ終えると、熊野と別れて会社に戻った。熊野はこのあたりによく来るとのことなので、近くに行くときは連絡して昼飯をいっしょに食べようということになった。
誰かといっしょに取る食事は、美味い。

 

※あとがき
『昼の駄作』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
これ実は実体験で、独りで酒飲みながらアニメ見てるより、友人と酒飲みながらアニメ見てあーでもないこうでもないとか言ってるほうが楽しく、そして酒が美味かったっていうね。
まあ、僕の場合は酒だったんですけど。あと独りのときより酔いが早かったw
独りも落ち着きますけど、友人とのメシや酒もいいですよ?

 

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