地球に死の宣告が下った。そのとき人類は……。短編小説『地球は赤かった』

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 この惑星の寿命が残り一年と宣告されたとき、誰もその言葉を信じなかった。
 もちろん僕も信じなかった。鼻で笑ったほどだった。
 僕の恋人など翌日にはその宣告をすっかり忘れていたほどである。
 今でこそ『宣告』と医者が余命を告げるかのような言い方をしているけれど、当時は『予言』とされていた。
 宣告したのが無名の占い師だっということもあるし、何よりそれまで地球は環境問題や紛争の火種は抱えていたものの、まだ致命的な状態には至っていない、ように見えたからだ。誰も予言が当たるなど思っていなかった。
 だが現実は違った。
 占い師がそう宣告してからというもの、世界各地で異常気象が猛威を振るった。洪水、台風、竜巻。火山活動も各地で活発化し、地震も毎日の日課のように頻発した。
 住む家を失い、職を失い、路頭に迷う人々が世界に溢れた。
 人々はここにきてようやく、この惑星の寿命が一年であることを信じた。

 地球を出るしかない。
 生き残った人々はそう考え、ひとつの船を造った。
 死にゆく惑星を脱出するための船である。
 ドーム球場と見紛うばかりの途方も無い規模の宇宙船で、その中で生活していけるという。生活しながら宇宙を彷徨い、人が住める惑星を探すのだ。
 けれどもちろん、全世界の人々を収容することなどかなわない。
 その宇宙船に搭乗するために、人々は争った。

 案の定と言うべきか、人々は自らの手でそのドーム型の大型宇宙船を破壊してしまった。
 とある国がミサイルを誤射してしまい、それがよりにもよって大型宇宙船に直撃してしまったのである。
 そのとき、地球の余命は一週間を切っていた。人類が絶望したのは語るまでもない。

 僕は絶望する人々を他所に、別の宇宙船に乗り込む。
 ドーム型の宇宙船に比べれば規模は小さいが、生きていけないことはない。
 多くの人々がドーム型に集中し執着する中で、僕たちは別の方策を練っていたわけだ。正直、あのドーム型に自分達が入れてもらえるなど思っていなかったし。権力や財力を持っている人間しか、入れないのだ。
「とにかく生き残らなければ始まらないからな」
 僕がそう口にすると、隣で僕と手をつなぐ恋人が静かに頷いた。彼女の瞳はこれから始まる宇宙の旅に期待しているのか不安に思っているのかわからないが、少し潤んで揺れていた。
 そして僕と恋人、それから少数の仲間を乗せた宇宙船は地球を飛び出した。
 宇宙船の窓から地球を見やると、どういうわけか地球は赤かった。

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