朝起きると、姉と妹が壮絶な死闘を繰り広げていた。原因は……。短編小説『稲妻が疑わしい』

 日曜の朝、ベッドから起きてカーテンを開けてみると快晴の青空が僕を出迎えた。昨夜は雷が鳴って台風もかくやというほどの荒れ模様だったのだけれど、いやぁよかったよかった。まあ、晴れたからって外に出るわけじゃなく、部屋に篭もってプラモ作ってるだけなんだけど。
 欠伸をしながら階段を下りてリビングに行くと姉と妹が壮絶な喧嘩を繰り広げていた。いや、これは死闘だな。
「ぬおおりゃああああぁぁぁ!!」
 姉が妹に強烈なキャメルクラッチを決めている。今年で二十歳になろうというのに、なんという大人げの無い女なのだ。
 対する妹も負けてはいない。
「ギャブ!」
「ウギャアア!?」
 絶叫し妹の背から離脱する姉。妹は姉の指に噛み付いたのだ。さらに我が妹は態勢を瞬時に立て直し跳躍、姉の顎に華麗なサマーソルトキックを見舞った。今年は高校受験だというのに格闘技の技に磨きをかける我が妹を、僕は割りと本気で心配した。
 ていうか、そろそろ止めるか。
「はーい、はいはい。ストップだストップ」
 僕は眠たげな声を発し、パンパンと手を打った。
 不思議なことに、こうするとこの二人はとりあえず戦いをやめるのだ。いつものことである。
「どうしたんだ、日曜の朝からプロレス観戦なんてしたくはないんだけど」
 僕が言うと、姉が吠えた。
「コイツがアタシの録画予約を消したんだよ!」
「そんなことやってないもん! お姉ちゃんが操作間違えたんじゃいの?」
 負けじと妹が吠え返した。
 詳しく事情を訊いてみると、姉がブルーレイレコーダーに録画予約しておいた番組が録画されていなかったという。
 姉は妹がレコーダーをいじって勝手に自分の録画予約を消したのではないかと疑い妹はやっていないと容疑を否認。そして先ほどのプロレス状態に発展したらしい。
 ただ、妹は過去に同様のことをやらかしているので疑われても仕方が無い。

「実は昨日、停電したんだ」
「「えっ?」」
 僕の発言に、姉と妹が目を丸くした。僕は続ける。
「午前二時過ぎだったかな。二人は寝てたけど僕はまだ起きてたんだ。プラモを作っててね。そうしたらいきなり停電して電気が消えちまったんだ。ビックリしたなぁ。手元が狂って、危うくデザインナイフで指を切るところだったよ」
「そういえば昨日の夜は雷がなってわね……」
 姉が顎に手を当てて昨日の夜を反芻している。
「そういうこと。つまり、レコーダーは停電によって起動しなかったから録画予約できてなかったんだ」
「なーんだそういうことか」
 姉はうんうんと納得して頷いている。よしよし。
 しかし妹は首を傾げている。
「それだとおかしくない?」
「な、何がだ?」
 僕は妹の質問を質問で返した。
「だって兄ちゃん、停電は午前二時だったんでしょ。でも姉ちゃんが録画した番組は午前一時からのやつだよ。録画されてなきゃおかしいよ。ちょっとレコーダー確認してみようよ」
「バカよせ!」
 僕の制止をひょいとかわし、妹はレコーダーを起動し録画された番組を確認した。
 そして彼女は「ふーん」と意味深な笑みを浮かべた。いかん。
「どうしたん?」
 姉が問う。
「姉ちゃんが録画予約したのと同じ時間に別の番組が予約されて録画してあんだよね」
「あーそうそう。何が録画されてんのかよく見なかったけど」
「『東京模型ショー ~プラモデルの力を世界へ示せ~』って番組が入ってるよ」
「模型……って」
 姉と妹の視線が僕に向いた。
 さーて、そろそろ撤退するかね。
 え?
 真犯人は誰かって?
 察してくれよハハハハハ!
 ……逃げるべきだな。
 と思ったところで、僕の両肩に彼女たちの手がポンと乗った。
 振り向くと、姉と妹はとても素敵な笑顔で僕を見つめていた。
 心なしか、肩に載せられた手の力が強くなった。

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