エレベーターが重量オーバーになった裏事情とは。短編小説『綿毛のようになりたくて』

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powerristnoseide

 会社に着いてすぐに、僕は駆け出した。エレベーターが今にも閉まりそうになっているけど、どうにか間に合うだろう。
 別に遅刻しそうになっているわけでもないのに走り出してしまうのは、常に時間に追われている現代人の悲しい性なんだなぁとか思いながら。
 
 
 

 ビーッ。
 
 
 

「えっ」
 僕がエレベーターに乗り込んだ途端に、耳障りなブザーが鳴った。
 重量オーバー、だと……?
 周囲からの冷たい視線に晒される。幸い僕とは違う課の人間ばかりで顔を見知った人はいなかった。いやぁスミマセンとヘラヘラと笑いながら僕は後ずさりエレベーターを見送ったのだった。
 それにしても今のエレベーター、そんなに人乗ってなかったような……。
 首を傾げつつ、僕は次のエレベーターを待った。

       *

 ううむ。彼には悪いことをしてしまったな。
 俺は今エレベーターに乗れなかった青年のことを思いながら心の中で謝罪をした。彼は決して太ってはいなかったし、本来ならエレベーターに乗ることができたのだ。
 何気なく俺は右腕をさする。
 スーツの内側には、重量10キロのパワーリストをつけている。
 それを両腕につけて、さらに両足にも装着している。もし俺がこのパワーリストを外せば、あるいは彼も乗れたであろう。けれど俺はこのパワーリストを外すつもりはない。
 どうしてかって?
 ならば試してみるといい。一日パワーリストをつけて過ごし、帰宅してからパワーリストを外してみると、体が綿毛になってしまったかのように軽いのだ。これは本当に病み付きになる。先ほどの青年にもすすめたいほとだ。
 興味があるなら是非。
 

※あとがき
『重い罪人』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
とりあえず言いたいのは、こんな重いパワーリストなんぞ付けないでくださいねってことですw
まあ、ドラゴンボールじゃあるまいし、そんな重いパワーリストなどないとは思いますけど。たぶん。どうなんだろ…。
 

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阿刀田 高
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