彼はなぜ右足しか使わないのだろうか。短編小説『右足バトルマスター』

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 バトルマスター。
 それは裏格闘技会のトッププレイヤーたちに与えられる称号で、マスターの名にふさわしい技と力を持った者にしか与えられない。
 セージもそんなバトルマスターのひとりなのだが、彼の戦い方はほかに例を見ない特殊なものだった。
 セージは、右足による蹴りでしか攻撃しないバトルマスターなのだ。
 

 

 リング上の対戦相手を、セージはじっと睨む。
 対戦相手の男もまた、セージを見据える。
 両者の間隔は五メートルほど。
 互いに間合いを取り、僅かな隙も逃さないといわんばかりに緊張の糸が張り巡らされている。
(どうせまた右足だろ)
 対戦相手はそう判断し、セージの右足のほうへあえて向かう。
 何の備えもなく食らえば脅威の右足だが、あらかじめ当たると分かっていてガードすれば、相応の準備をする余裕も、またカウンターに持ち込む余力も生まれる、はずだった。
「りゃああぁぁぁ!!」
 対戦相手が咆哮をあげてセージの右足のほうへと瞬間的に移動、腕をクロスさせ、来るハイキックに供える。
 ガードした後に左足で踵落としを食らわせと企てた。
 セージは対戦相手の予想通り、右足によるハイキックを見舞った。
 だが、全てが予想通りとはならなかった。
 セージのハイキックが、対戦相手のクロスした腕に当たる。途端、
 
 
 
 

 対戦相手は吹き飛ばされた。
 
 
 
 

「ぐおっ!?」
 対戦相手はリング上を派手に転がり、倒れ、そのまま動かなくなった。
 ガードなどあってないようなものと言わんばかりの凄まじい威力の蹴りであった。
 セージの勝利だ。
 今回の試合も、彼は右足による蹴りしか使わなかった。

       *

 わたしはセージの控え室へ行き、彼の右脚の具合をチェックする。
「酷い傷よ。青痣だらけだし……このままだといつか右足が折れてしまうわ」
「構わない」
 セージはまるで意に返さない。
「ねぇ、もうやめよ? ね? わたしならもう……」
「そういうわけにはいかない」
「もう……」
 その後もわたしは「試合にはもう出ないで」と言ったのに、彼は聞いてくれなかった。
 セージはわたしの右足を見て、悲しそうな目をした。
 わたしの右足は、義足。
 五年前、彼が運転するバイクで二人乗りをしていたとき、トラックと衝突する事故に遭った。その結果、わたしは右足を失ったのだ。

       *

 数日後。
「怪我しないでね」
「それでは意味がない」
 そう言い残し、彼は控え室を出た。
 彼は今日もまた、試合に臨む。
 右足を失うために。

 

※あとがき
『傷だらけの足』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
バトル物書きたいなーと思っていたのでこんな具合になりました。
書くの難しいですなぁバトル物って。うん。
あと、この作品に書いてある裏格闘技やらバトルマスターというのは僕の頭の中から生まれた物です。実際にあるのかもしれませんがここに書かれているものとは関係ありません。まあ、一応ね。

 
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