オマエがいないと夜が寒いんだよ……。短編小説『暖かい猫』

 俺んちに猫が来たのは、春が来たばかりのうららか陽気の日のことだ。
 散歩にはうってつけの季節で、俺は心躍らせていたのだが、猫の野郎が来たせいで心萎んでしまったよ。
 猫は俺を恐がることなく俺んちの中に入ってきた。
「みゃー」
 猫が挨拶代わりなのか鳴き声をあげた。
 俺は黙殺した。猫は好きじゃない。

       *

 それからというもの、猫は俺に馴れ馴れしく接してきた。
 接する、とは文字通り俺の体にすりすりと寄ってくることを指す。
 鬱陶しいんだよと言ってもヤツはまるで聞いてくれない。
 夜寝るときまで俺んとこにいるんだぜ? 鬱陶しいことこの上ないな。
 ……まあ、暖かいから別にいいけど。

       *  
 
 猫が近所の野良犬に吠えられているのを見かけたのは、俺が散歩をしているときだった。
 あいつはいつも気ままにそこらへんをフラついている。今日もいつものように近所を歩いていたのだろう。
 野良犬は雑種で、見るからに獰猛そうな牙をむき出しにして猫を威嚇していた。
 猫はというと、逃げればいいものを腰でも抜かしたのかその場から動けず震えている。おいおい、猫なんだから俊敏な動きで逃げろよ。
「バカかあいつは!」
 俺は連れの制止を振り切って猫を助けた。野良犬はキャンキャンと情けない鳴き声をあげて去って行った。いるんだよなー、ああいう自分より弱いヤツの前でだけ大きく出るヤツ。
 猫は涙目で俺を見上げ「みゃー……」と力なく鳴いた。いや、泣いたのか?
「ったく、心配させんじゃねーよ。オマエがいないと夜は寒いんだ」
「みゃー」

       *

 僕の制止を振り切って、タローがタマを助けた。
 僕はその光景に驚きつつ、内心でホッとしていた。
 犬と猫のコンビで飼うのはどうなのかと心配していたけど、この様子なら大丈夫そうだ。
 タローとタマは「わんっ」だの「みゃー」だのと鳴き声を発している。何か会話をしているのだろうか。
 その内容はもちろん僕にはわからないけれど、二匹の間に絆が生まれているような気がした。
 

※あとがき
『俺と猫』というお題で書いた即興小説を加筆修正したものです。
最初は炬燵であたたまる主人公に猫が悪戯するような話を書こうとしたんですが、どうにも物語が展開できそうになかったのでこんな感じに。
 

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