使い捨てられることはわかっている。短編小説『折れた僕』

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 折れた自分の骨を見つめ、僕は苦笑した。
 さすがにもうこうなっては助からない。
 まあ、助かろうと思わないけど。 

       *

 思えば色々な人に使ってもらった。
 それもひとえに僕がビニール傘だからだろう。
 誰も僕などに愛着など持つわけもなく、コンビニで売られていた僕を中年の男が買い、彼はそれを電車の中に忘れ、それを別の人が拾って使って……というような具合に僕はたくさんの人々の手によって使われた。   

       *

 僕を折ったのは最後の持ち主だ。女性だった。高校生ぐらいだったろうか。
 彼氏にフラてしまい、彼女は自暴自棄になって地面に僕を叩きつけた。
 僕はその衝撃で呆気なく真ん中から折れてしまった。我ながらなんと脆い作りなのだと呆れた。
 まあ僕はこの通り使い捨てられる運命にあるビニール傘だ。骨が折れて捨てられることも想定内である。
 けれど、僕の柄につけられたキーホルダーは想定外だ。
 これは彼女が彼氏といっしょにデートしたときに買ったもので、なぜか彼女は僕の柄に取り付けた。彼氏と付き合っている間、ずっと僕の柄にはそのキーホルダーがブラブラしていて落ち着かなかった。
 このキーホルダーは思い出の品だと思うのだが……。このままだと遅かれ早かれ僕はゴミ回収業者の手によって回収され、埋め立て処分場にでも廃棄されてしまう。
 まあ、思い出も捨ててしまいたいということだろう。僕は傘なので人間の気持ちなど理解できやしないが。 

       *

 彼女が僕を拾い上げたのは、その翌日だった。
 公園に捨てられた僕を、彼女は大事そうに持ち上げた。僕はそのときキーホルダーを取りに来たのかと思った。やはり思い出を大切にしたいということなのだろうと察した。
 けれど、意外なことに彼女はキーホルダーを付けたまま僕もいっしょに自宅に持ち帰った。
 道中、彼女は震えた声音でこう呟いていた。
「ごめんね、ごめんね……大切にするから…………」
 と。
 僕も、思い出の一部になれたのだろうか。
 やはり人間の気持ちはよくわからない。
 

※あとがき
『誰かの傘』というお題で書いた即興小説を加筆修正した作品です。
それがたとえ使い捨てられることを前提に作られたとしても、使用者にとっては大切になり得る場合もあるんじゃないのかなぁと。そんなことを思ったり。
 

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