流行っているので買ってみた。短編小説『蘇る滅びた惑星の記憶』

「どうですか、今なら三割引でご提供しておりますが」
「どうですか、と言われてもねぇ」
「流行っておりますし、お子さんもきっと喜びますよ」
「子供……か」
 結局、僕はしつこく食い下がる訪問販売員の押しの強さに負けて〝それ〟を購入することにした。子供たちが喜ぶ姿はたしかに見たいし、僕も〝それ〟に興味があった。

       *

 それから一週間後、我が家に宅配便が届けられた。
 巨大なトラックが三台、我が家に横付けされる。
 配達員たちは手馴れた様子で我が家の庭に〝それ〟をセッティングする。最近流行っているらしいから、この配達員たちももう何十件もこの作業をこなしているのだろう。相当に大変な作業なのにやけに手馴れている様子が窺えた。

       *

「わーい!」
「うひゃーっ!」
 子供達がワイワイと楽しそうに遊んでいる。
 海で。
 僕が買ったのは移動式の海辺である。
 地球が滅びてからすでに十年以上が経った。幸い、代替の惑星が見つかって人類はそちらへ移動し事なきを得たのだが、この惑星には海がなかった。
 そこで最近流行っているのがこの移動式の海辺である。
 海水、砂浜、海洋動物の三種がトラックにそれぞれ積載させられ届けられ、それを配達員が庭に配置する。当然庭は広くなければいけない。自慢じゃないけど我が家の庭は割りと広いので問題ない。
 僕も久々に海を見たが、買って良かった。懐かしい地球の思い出を脳内に思い浮かべることができた。
 何より、子供達が喜んでいることが最高だ。
 ちなみにこの移動式の海辺だけど、いくつかの会社で激しいシェア争いをしている。僕が買ったのは『進撃の海辺シリーズ』というもので、海洋動物のバリエーションが豊富で中には『巨人』なんてのもオプションで注文することができたが、あまり見た目が良くなかったのでオプションは断っておいた。
「お父さーんも海入ろうよ~!」
「おーう」
 子供達が呼んでいるので、僕はこれで失礼するよ。
 

※あとがき
『進撃の海辺』というお題で書いた即興小説を一部加筆修正した作品です。
もうね、どーしろっちゅうねん!とお題を見たときは思ったのですが、いざ話を考えてみると楽しくなってきて好き勝手に書きました。
好き勝手なだけあって本当にもう色々とアレですが(笑)
 

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