急に走りたくなってきた!短編小説『七種のハイ』

 危険ドラッグならぬ合法ドラッグが流行っているようなので、僕も手を出してみた。
 なーに、合法だから危なくないべ?
 そう軽く考えていた僕だったが、それが大間違いであることを思い知ることになる。

       *

 色々迷った末、ネット通販で七種類の合法ドラッグが袋詰めにされているものを購入した。
 なんでも『健康的にハイになれる』とか。
 胡散臭いことこの上ないけれど、合法なのだから大丈夫だろう。この手のコピーはよくあるし。
 一週間後、合法ドラッグが届いた。
 確認してみると、袋の中にはたしかに七種類の錠剤が入っているのだが、どれにどんな効能があるのかよくわからない。説明書の類も一切なかった。
 僕が自分の部屋でどれを飲もうか迷っていると姉が入ってきた。
「いえーい! 姉様のご帰宅だぜい!」
 姉は酔っ払ってテンションがハイになっていた。酒もドラッグだろと思わずにはいられない。
 社会人になって少しは落ち着きを取り戻すかと思いきや、全くそうならなかった。どうも姉が勤める会社には酒豪が揃っており、姉もその仲間入りを果たしてしまったらしい。本当に働いているのかと時々疑わしく思う。
「ノックもなしに人の部屋に勝手に入ってくんなよ」
「ごっめーん。で、何してんの? ナニしてんの?」
「なぜ『何』と『ナニ』を使い分けた……」
「おっ、それはもしや合法ドラッグ!」
 僕の声など無視し、姉は僕から合法ドラッグが入った袋を取り上げた。
「あ、バカ返せよ!」
「ふふん」
 姉は不敵に笑うと、適当に一粒つまんで飲んだ。
「あー……高かったのに」
 少なくとも大学生の僕にしては、という意味だけど。
「お、おぉ……」
 なにやら姉が呻き始めた。
 すると、突如彼女は僕の本棚から参考書を取り出して勉強をし始めた。社会人が古文の問題集なんぞ解いても意味はないと思うが。そして高校時代の参考書を未だに全部とっておいてる僕も僕だが。
「やっば! 古文超楽しい!」
「…………」
 これがこのドラッグの効能なのだろうか。たしかにハイにはなっているけど。
 僕も一つ飲んでみた。
 途端、体の内側が熱くなった。なんというか、じっとしていられない気分だ。
 僕は家を飛び出してジョギングを始めた。
 僕はそのまま五時間走り続けた末、道端で倒れたのを偶然通りかかった警察管に保護された。
 姉は八時間も勉強し続けた。僕の部屋の参考書や問題集はほとんど解いてしまったらしい。
 後にわかったことだけど、姉が飲んだのは『勉強味』で、僕が選んだ錠剤は『スポーツ味』だった。
 どんな味だよ。

       *

 後日、合法ドラッグは危険ドラッグに認定された。
 

※あとがき
『スポーツの味』というお題で書いた即興小説です。
どんな味だよ……と途方に暮れたけれど、どうにか書けました。どうでもいいけど『危険ドラッグ』って当初は首を傾げること請け合いのネーミングでしたけど、なんかもう馴染んでますね。
 

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