土地を買う彼女の目的は?短編小説『あの土地を求めて』

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「ではこの値で買いましょう」
「……わかりました」
 わたしの言い値に、老人は渋々といった様子で頷いた。
 彼は若い頃は武器職人として有名で王からも一目置かれる存在だったらしいが、現在は隠居してひっそりと暮らしていた。
 そこへわたしのようなバイヤーに押しかけられて、さぞや迷惑しているに違いない。
 わたしの目的のためには、迷惑も何も知ったことではないが。

       *

 ようやく手に入った土地は、城下町から十キロ以上も離れている。
 普通のバイヤーなら絶対に買わない土地だが、わたしはこの土地を見つけた瞬間、何があろうと買うと決めた。
 ここに家を建て住んでいた老人は当初渋っていたが、法外な金額をチラつかせたらようやく陥落した。

       *

 老人の家を潰し更地にして、わたしはそこの大地に霊を呼び出す魔術の術式を書き込んだ。
 わたしはただの土地バイヤーではない。魔術師だ。
 というより、本来は魔術師のほうが本業ではあるのだが、土地のバイヤーは一度成功すれば見入りが良いため手段として携わっている。
 わたしの究極の目的を達成するにあたっても、土地のバイヤーという職業はうってつけだった。
 術式を書き込むと、わたしは呪文を詠唱し始めた。
 ほどなくして、術式の中央から霊が現れた。
 それは、わたしの死んだ父親だった。

       *

 わたしの父はわたしがまだ幼い頃に戦場で殉職した。
 母から聞いたのはただ『殉職した』ということだけで、どこで死んだのかは定かではなかった。
 わたしは父に会いたかった。
 そのため、わたしは父の霊を呼び起こす魔術をマスターし、父が死んだ場所を探すために土地のバイヤーなんていう嫌われ者の職業にまでつくことになった。
 霊は生前の人間が死んだ場所でないと呼び起こすことができないのだ。

       *

 霊となった父が微笑んでいる。
 わたしも微笑み、父に手を伸ばした。
 案の定ではあるが、父とわたしの手が触れ合うことはかなわなかった。
 冷たい雫が一筋、わたしの頬をすぎていった。
 

※あとがき
『彼女が愛した土地』というお題を元にして書いた即興小説を、一部加筆修正した作品です。
割と普通のお題だったのですが、普段が突拍子もないお題ばかりで逆に戸惑ってしまいました(笑)
 

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