息子の仇を討とうとした母が見たものは…。短編小説『サーベルと短刀』

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 サーベルを握るその女性は、森の中を歩いていた。
 若い頃はギルドから受注したクエストを日々こなしていた戦士だったが、もう歳が五十もいこうとしている今となっては、得物を手にしているだけで疲れてしまう。
 なぜ魔法を学ばなかったんだと、若い頃の自分を責めたくもなる。
(泣き言なんか言ってる場合じゃないね……)
 疲れは決して彼女から憎しみを消してはくれなかった。

       *

 彼女の息子がゴブリンの一家に殺されたという一報が入ったのは、昨日の夕方のことだった。
 そのとき彼女は帰ってくる息子のために夕食を作っていた。
 息子の好物のシチューだ。
 その日、息子は初めてギルドでクエストを受注した。
「最初は簡単なクエストにすんだよ」
「分かってるってば」
 なんて会話を昨晩したが、本当に分かってくれたのだろうかと不安でもあった。
 息子は母と同じで戦士を選んでいた。
 魔法がとかく座学が多いためだという。母もまた若い頃同じ理由で戦士を選んだクチだった。 
(親子だねぇ)
 と、彼女は苦笑しながらスープの入った鍋をかき混ぜていた。
「大変だ! 大変だよっ!」
 お向かいの奥さんが息せき切った様子で家の中になだれこんできた。
 すわ魔物が村に侵入したかと、若い頃の血がたぎった彼女だったが、
 
 

「あ、アンタんとこの息子が……」
 
 

 その後の記憶は曖昧だ。
 事情を聞いて、気がついたらサーベル持ってこの森の中に入っていた。
(仇は、取ってやるからね)
 サーベルの柄を握る手からは、片時も力が抜けていなかった。

       *

(あれね……)
 ゴブリンの住処らしき洞窟を見つけた。
 聞いた話だと、ゴブリンの側も数は一匹らしい。
 一対一で相手は低級モンスター。
 勝てないはずはない。
 ……若い頃の話なら、だが。
 息子が生まれてからかれこれ二十年近く、ろくに戦っていないどころかサーベルの存在すら忘れていたほど。
(大丈夫、腕は鈍っちゃいないよ)
 サーベルの刃がギラリと凶暴な光沢をたたえている。
 彼女自身もまた、怒りによって凶暴な気配を漂わせていた。
 その気配に気付いたのだろうか。
 洞窟の中から一匹のゴブリンが姿を現した。
 ゴブリンと彼女の視線がぶつかる。
「アンタだね! うちの息子をやりやがったのはっ!」
 サーベルを構え、彼女は剣先をゴブリンの脳天に向ける。
「許さないよ。楽に死ねると思わないことだね」
「ケッ、そりゃあこっちのセリフさ!」
 ゴブリンが吠えた。
 まさか反論されるとは思ってもみなかったので、彼女は目を丸くしてしまう。
 ゴブリンの声はひどくしわがれているが、どことなく女性を思わせる声音だった。
「テメェの息子だってアタシの息子をブチ殺したんだ! 仇を取るのさこっちさっ!」
 そう怒鳴ると、ゴブリンは手にしていた短刀を構えた。
 対峙する彼女とゴブリン。
 
 

 どれぐらい向き合っていただろうか。
 彼女たちは同時に、自分の得物を地面にうっちゃった。
 ふぅ、とひと息つき、彼女は言う。
「アンタのことは許さない」
「アタシだって同じさ」
「「けど」」
 声がそろう彼女たち。
 
 
 

「アンタのことは忘れる」
「テメェのことは忘れてやる」
 
 
 

 彼女は背を向け、その場を後にしたのだった。
  

※あとがき
『ワイルドな母』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。
大家族の肝っ玉母さん的なキャラを登場させたかったのに、なぜこうなったw
 

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