俺は独りでも演劇をやる!短編小説『アンチ・ミンナ』

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 教室内はザワザワとうるさいけど、それもまあ仕方ない。
 高校の文化祭を決めるホームルームなのだから。
 しかも僕らは三年生、高校生活最後の文化祭だ。
 盛り上がって当然。
 案の定、様々な案が出た。
 お化け屋敷、喫茶店、クレープ屋などなど。
 その数ある案の中で、演劇を推している佐々木が演劇にすべき理由を熱弁する。
「いいかオマエら! これだけの人数で芝居をできるなんてそうそうあるチャンスではない! しかも俺たちはもう三年! 安心しろ、脚本から演出まで全て俺が引き受ける。さあ、演劇で文化祭を盛り上げようぜっ!」
 猛々しく拳を天に突き上げる佐々木。
 そんな佐々木に、クラスメイトたちは冷ややかな視線を送っていた。
「演劇部が幽霊部員ばっかだからって文化祭利用すんじゃねー」
「最後の文化祭なのにテメーの好きにされてたまっかよ」
「佐々木の脚本演出じゃ安心できねーし」
 非難轟々だった。
 僕としても演劇は勘弁して欲しい。
 正直言って佐々木の熱さにはついていけないし……。
 結局、喫茶店をやることになった。
 そして佐々木はというと、喫茶店をボイコットすることを宣言した。
 彼は言った。
「フハハハハ! その案は多数派であるということにすぎん! 俺は独りでも演劇をやるっ!」

       *

 文化祭当日、佐々木が一人芝居を演じた。
 佐々木は本当に独りで演劇をやってみせたのだ。
 結果は大反響だった。
 後になってわかったのだが、彼はひとりで文化祭実行委員会と交渉し、時間と場所を確保したという。
 実行委員会で演技を披露したら絶賛されたというのも、単独公演の許可が下りた理由のひとつらしい。
 たった独りであるはずなのに、その行動力は1クラス分以上のものがあった。
 僕たちの喫茶店はというと、まあ可もなく不可もなく。
 特に目立った話題も提供することなく、適当にワイワイやっていつの間にか終わっていた。

       *

 文化祭終了後、僕は佐々木に訊いた。
「オマエ、よく独りで演劇やろうなんて思ったな」
「あ?」
 彼はよくわからんといった顔をした。
「俺は演劇をやろうって気持ちしかなかったからな。それ以外の選択肢がなかった。というか考えなかった。それだけだ」
「……スゲェ」
「そうかぁ?」
 佐々木は最後まで判然しないような表情を浮かべていた。
 僕も佐々木ほどに好きになって夢中になれる何かが欲しいと思った。
 

※あとがき
『フハハハハ!それは多数派』というお題を元に書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
なんとも形容し難いお題に思わず笑ってしまった。
多数派で思い出すのは、中学時代でのこと。
『みんなでがんばろう!』というようなノリで合唱コンクールやら運動会の練習やらをしたんだけど、実際のところ『みんな』というのは中心になっている人物とその取り巻きで、ほかの下層にいる面々(僕を含む)は、必要なパーツに過ぎなかったですね。
結局のところ『みんな』という単位にするために必要だから参加させ、彼らはなにやら勝手に感動していたなぁと。
なんとも冷めた中学時代だとは思うんですけど、中心にいた彼らのプラスエネルギーと見せかけたエゴのような物は、大人になった今でも首をかしげてしまいます。
そんな思いもあって、今回はこのような独りの力を際立たせる作品となりました。
 

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