負けず嫌いの彼女が勉強していた科目は?短編小説『チョコライオン』

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 突然だが聞いてくれ。
 俺の彼女はスゲェ可愛い。
 え?
 聞きたくない。いやいや聞いてくれよ。
 クラス、いや学年でも一、二を争うぐらいに可愛いんだってば。
 そして恐ろしく頭が良い。
 これもまたクラス、いや学年でも一、二を争うぐらいに。
 そして彼女は、こと勉強においては何なんでも一番にならないと気がすまないタイプだった。

       *

「なあ……」
「んぅ?」
「そろそろ遊び行かないか?」
「え、でもまだ六時間しか勉強してないし」
「…………」
 彼女の言葉に俺は戦慄した。
 六時間て……。
 時間の感覚が違いすぎる。
 俺たちは今、俺んちの俺の部屋にいる。
 日曜の午後三時。
 のんびりとした休日。
 うららかな日和。
 そして、両親は留守(←ここ大事ね)。
 高校生男子の俺にしてみれば、これはもうまたとないチャンスだろう。
 が、しかし、彼女はどっちゃりと参考書を抱えてやって来て、あまつさえ勉強を始めてしまった。
 三週間後に中間テストはあるけど、三週間後だぜ?
 こんなに勉強する必要ないだろ……。 

       *

「中間なんてまだ先だしさ、どっか行かね? なんか観たい映画とかないのか?」
「中間?」
 彼女が顔を上げた。
「あたしは中間の勉強なんかしてないし」
「え、でも勉強なんだろ?」
「はぁ」
 あからさまにため息をつかれてしまった。
「あのね、勉強って言えば学校の定期テストしか思い浮かばないのはどうかと思う。そんなんじゃこの弱肉強食の社会で生きていけないよ?」
「弱肉強食って、そんなジャングルやサバンナじゃあるまいし……」
「社会ってジャングルやサバンナみたいなものよ。その中であたしはライオンでありたいの」
「ライオン?」
「そう。強くたくましく、ね。そのためには勉強して戦えるだけの強さを身につけなきゃいけないの」
「そ、そうか」
 俺は彼女に気圧されるようにして頷いた。
 現時点ですでにたくましい気がしてならない。

       *

「で、結局何の勉強してんだ?」
「……ひみつ」
 彼女は少し頬を赤らめながら答えた。
 参考書にはカバーがかかっていて何の教科だかもわからない。
 ま、いっか。
 それから数日後、トマトみたいに顔を赤くした彼女からバレンタインデーのチョコをもらった。
 あのとき読んでいた参考書はそもそも参考書などではなく、チョコの作り方の本だったとのこと。
 とんだ可愛いライオンだった。
 

※あとがき
短編だとどうしてもバッドエンドになることが多いのでたまにはハッピーでふわふわしたのが書きたいなーと思い書いてみました。
ちなみに今作も例によって即興小説で書いた作品を加筆修正した作品です。お題は『シンプルなライオン』。
まあ、恋する気持ちほどシンプルなものはないかなと。
こと青春時代においてはとくに。
大人になると打算やら将来やら生活やら収入やらとシンプルでなくなるのでいけませんw
 

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