モンスターペアレンツ対策万全の学校?短編小説『スクール・エクスカリバー』

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 モンスターズ。
 それは、モンスターペアレンツ達の集団である。
 もっとも、モンスターズは自分達のことをモンスターだとは思っていない。
 あくまでも正当性は自分達の側にあると信じて疑わない。
 彼らは真夜中だろうと教師にメールや電話、果ては直接訪問して無理難題を負わせてくる。
 口汚い罵倒も珍しくない。
 そんな彼らに対し、まるで動じない学校があった。
 それが、聖グラディウス学院中学校。
 モンスターペアレンツ対策において、この学校の右に出る中学はないだろう。

       *

「ちょっと! なんでうちの子が遠足の写真に一枚も写ってないのよっ!」
 小太りの中年女性が唾を飛ばしながら抗議している。
 応接室での一幕である。
 その中年女性は聖グラディウス学院中学の一年に自分の息子が通っているのだが、先日の遠足で一枚も写真がなかったと主張している。
 ちなみに彼女もまたモンスターズの一員である。
 対応しているのは一年の教諭、剣埼亜々紗(つるぎさきああさ)。
 彼女はモンスターに対しまるで動じることなく、冷ややかな目で小太りモンスターを見据えている。

       *

「一枚も写っていない、ということはありえません」
 剣埼は言った。
「嘘つかないでちょうだい!」
「事実です。あなたのお子さんは集合写真にしっかりと写っています」
「そ、そんなのは当たり前でしょう! 私が言っているのは集合写真以外のことよぉ!」
「集合写真以外で写っていないのは、我々に非があるわけではございません」
「どうしてそうなるよ!」
「あなたのお子さんがボッチだからです」
「ぼっち?」
 モンスターが首を傾げている。
 言葉の意味を理解しかねているらしい。
「ぼっち。つまり、友達がいないということです」
「なっ……」
「カメラマンも全員を撮るよう努力はしていると思います。しかしボッチ特有の気配を殺すある種のステルス的な特技によってカメラマンの視界から姿をくらましているのです」
「姿をくらます……」
「そうです。姿を消されてはカメラマンにもどうしようもありません。姿を見せないあなたのお子さんに問題があります」
「友達を作らせるようにしないアンタら教師に問題があるんでしょう!?」
 ギロリと剣埼を睨みつけるモンスター。
 しかし剣崎の瞳は凪いだ海のように静けさを保っている。
「友人の有無については、我々教師陣が子供達に無理強いすることはできません。友達になれ、と言われて友達になるものではないでしょう。それぐらいは、人並みに物を考えられればわかるかと思いますが」
「あ、え……?」
 モンスターは酸欠の金魚のように口をパクパクとさせていた。

       *

「さすがですね、剣埼先生!」
「別に」
 後輩の教師に先ほどのモンスター退治を賞賛された剣埼だが、彼女はさして嬉しそうにすることもなかった。
「だってあのモンスターズ相手に一歩も引かないなんて」
「ああいう輩に恐れていたら、ますますモンスターズが勢力を拡大させるだけ。あなたも堂々としていなさい」
「堂々と言われても……」
 後輩教師が困ったように苦笑したのだった。
 

※あとがき
『不屈の学校』というお題を元に書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
最初はスポーツ物にしようかと思ったのですが、30分という時間制限ではキツイ上にそもそも僕はスポーツに関心がないので断念(笑)
そんなわけでこのような作品になりました。
まあ、モンスターはペアレンツだけでなくティーチャーの中にもいるとは思いますけど……。
 

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