誰がくれたチョコなんだろ。短編小説『トラップバレンタイン』

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 五歳の息子、翔太のカバンの中に見覚えのない箱が入っていた。
 プレゼント用に包装されている。
 息子に訊いてみたけど、

「しらなーい」

 と素っ気ない返事が。
 仕方ないので開けてみると、入っていたのはチョコとミニカーだった。
 ははん、バレンタインデーか。
 直接渡すのが恥ずかしくて、こっそりカバンの中に入れちゃったってワケね。
 男の子ウケをよくしようとミニカーを入れているあたり、なかなか頭の回る女の子だなとわたしは関心した。
 ミニカーを見つけた翔太は

「あ、いいもんみっけ!」

 と言ってミニカーだけかっさらっていった。
 ま、いっか。
 
 

 翌日、幼稚園で先生に相談してみた。

「あららぁ、どの子が入れたんでしょう」

「分かりませんか?」

「ううん」

 先生は困った顔でチョコが入った箱を観察している。
 
「この箱を見ただけじゃ分かりませんねぇ。チョコに何か特徴はなかったんですか?」

「ハート型のチョコってだけで名前が分かるような装飾はされてませんでした。あとミニカーがついてましたけど、それも別に特徴はなかったですね」

「となると、こっそりひとりひとりに訊いてみるしかないですね」

「頼まれてくれますか」

「はい。翔太くんも誰からもらったのか分からないんじゃ気持ちわるいでしょうしね」

「そうですね」

 翔太は全く気にしてないんだけどね。
 ミニカーも既に飽きたのかおもちゃ箱の中に放り込まれたままだし。
 チョコは翔太が早々に平らげてしまったし。
 
 
 
 結局、誰からのチョコなのかは分からなかった。
 先生はクラスの園児ひとりひとりに訊いてみたけど、全員が自分じゃないと答えたという。
 となると、ほかのクラスの子だろうか。
 そうなるとお手上げだ。
 人数も多いし、なによりこれ以上先生に手間をかけさせるワケにはいかない。

「ま、恥ずかしがり屋さんからの贈り物ってことでいいかな」

 息子を寝かしつけた夜、わたしはひとりでチョコの入った箱をつついた。
 そのとき、玄関の鍵が開けられる音が響いた。
 旦那が帰ってきたみたい。
 

       *
 

「ん、旦那さんが帰ってきたみたいね」

 ワタシは受信機から聞こえてくる音声に耳をすませる。

『ただいまぁ』

『おかえりぃ。ねぇ聞いてよ、翔太の同じクラスのユカリちゃんって子がいるのね。その子のお母さんがさー……』

 おーdisってるdisってる。
 ユカリちゃんのお母さんをdisってますよ翔太くんのお母さん。

「盗聴器は上手く仕掛けられたみたいね」

 娘のアカリに翔太くんのカバンの中にチョコ(に見せかけた盗聴器)を入れさせたのはワタシ。
 盗聴器はいっしょに入れたミニカーの中に仕込ませておいた。
 ふふっ、こんなに上手くいくなんてね。
 翔太くんのママのことは前々から嫌いだった。
 働いていることを理由に地域のボランティアに参加しない。
 町内会のイベントにも参加しない。
 そんなのってあり?

「まだdisってるわね。さあて、この音声をどうしよっかなー」

 ワタシは翔太くんのママが垂れ流す愚痴を楽しく聞きながら、心弾ませていた。
 

あとがき

『可愛いわずらい』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。

加筆修正の段階でもっとこうハッピーになれる話にしたかったんだけど、もうどうにもならんですw

お題がキュートなんで当初は可愛い少女が恥ずかしがってこっそりチョコを渡した、という体を作ったのに、なぜに盗聴器が…って僕が書いたのか(苦笑)

いやまぁ、これが即興小説の醍醐味なんですよ。

どう転ぶかは作者でも分からない。

なんなら即興でなくても小説の執筆っていうのは次の瞬間には作者の予想もしなかった展開が起こり得るんです。

よし、言いワケ完了。
 

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