独りになりたいのに……。短編小説『彼の傘に守られなければ僕は生きていけない』

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 どうあがいても、僕は彼に守られないと生きていけないらしい。
 それはまるで、核の傘に守られるかのように。

       *

 僕にはタケルという幼馴染がいる。
 幼稚園の頃からの仲で、タケルは僕にとってまさにヒーローだった。
 僕の身近で、タケルほど強いヤツはいないし、タケルほど人気のあるヤツもいない。
 幼稚園、小学校、中学の今でも、僕とタケルはずっといっしょだ。
 僕はというと、ひ弱で、面白いことも言えなくて、学校生活を送る上で不自由極まりない性格をしている。
 そんな僕が学校生活を不自由なく過ごせているのは、どうあってもタケルのおかげだった。
 タケルは僕に対して、いや、僕に対してだけは優しい。
 そのおかげで周囲も僕の存在を受けて入れてくれていた。
「オマエは、俺が守ってやっから」
 タケルは口癖のように、よくそう言ってくれた。
 僕にとってはそれがとても、
 
 
 
 

 鬱陶しかった。

 
 
 
 
 独りになりたい。
 中学に上がる頃には強くそう思うようになった。
 タケルはいつも僕についてくる。
 たしかに守られてもいるけれど、タケルが僕の傍から離れないというのもある。
 いつしかタケルの感情に僕は気付くようになった。
 彼は、僕のことを……。
 
 
 
 

 僕は、嫌だった。

 
 
 
 
 好きな女子だっているんだ。
 僕は、僕の好きな子といっしょになりたい。
 ある日、僕はタケルに自分の気持ちを打ち明けた。
「ごめん、もう僕に付きまとうのはやめてくれ」
「えっ、付きまとうって……俺はオマエを守ってるんだぞ?」
「じゃあ、守るのをやめてくれ」
「いやでも……」
「サヨナラ」
 僕は一方的にそう告げて、タケルから離れた。
 その日から、僕とタケルが関わることはなかった。
 それは周囲にもわかったらしく、程なくして僕へのイジメが始まった。
 タケルがいなくなってわかったことだけれど、僕はどうも同じクラスの男子からよく思われていなかったようだ。
 イジメは徐々にエスカレートしていく。
 教科書がなくなり、上履きが捨てられた。
 ついには廊下を歩いているときに突然足をかけられ、転ばされた。
「いっつ……」
 膝を強く打った。痣になっているだろうな……。
 なんだってこんなことに……。
「ようオマエ、タケルがいねぇと何もできねえんだな」
 僕に足をかけた男子が嘲笑し、周りにいた人たちもほくそ笑んだ。
 悪魔に囲まれているみたいだった。
 生きた心地がしなかった。
 だが、僕の見ている前で、その男子の体が横に吹き飛んだ。
 横合いから殴られたのだ。
 タケルに。
「大丈夫か」
「う、うん……」
 僕はタケルが差し出してくれた手をとって立ち上がった。
 そうしてタケルは僕を引っ張っていく。
「オマエは、俺が守ってやっから」
「…………うん」
 彼の手は、まるで鎖であるかのように僕を捕まえて離さなかった。

       *

 どうあがいても、僕は彼に守られないと生きていけないらしい。
 それはまるで、核の傘に守られるかのように。
 

あとがき

『どうあがいても傘』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
このお題を見て、真っ先に『核の傘』が浮かんだのですが、それでSFっぽい作品を書くのもなんだかなぁと思い、ひねくれてみました(笑)
ひねくれたせいで、僕の作品史上初のジャンルになってしまったわけですが。
まあ、そこまでガチなものでもないですし、いいかな(汗)
 

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