わたしは究極の晩餐を作ることに成功した。短編小説『料理の材料は彼』

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「むむむ……」
 わたしは腕組みをし、ひとり唸っていた。
 眼前にはこの日のために用意した食材の数々。
 そう、とりあえず用意はした。用意は。
 彼氏が家に来るので夕食を作らねばならないのだ。

       *

 一時間後、わたしは絶望していた。
 まな板の上にはもはや原形をとどめていない野菜の数々。
 飛び散っている肉片は、何のお肉だっけ……。
 自分の料理スキルが最下層であることは十二分にわかってはいたけど、やはり手料理ができる女子というのは今も昔も男の子をときめかせる属性のひとつ。
 わたしもその属性の仲間入りを果たしたいと思ったんだけど……。
「無理だわ……」
 ひとりごち、わたしは嘆息する。
 仕方ない。
 こうなったら……。

     *

 インタホーンが鳴った。わたしはムンッと気合を入れて玄関のドアを開ける。
 開けて早々、
「さあ、召し上がれ」
 
 
 
 

 わたしは自分を差し出した。
 
 
 
 

 首にプレゼント用のリボンを結び、彼好みの水着を着て、その上にエプロンを着用した。
 女子にだけ許された、まさに最後の手段。最終奥義。
 彼氏の反応が恐い。ここでドン引きでもされようものなら、女子として終わる。奥義なのに。
 果たして……。
 予想外のことが起きた。 
 彼氏はたしかにいるんだけど、もうひとり、わたしの知らない女の子がいた。
 女の子は、彼の腕に自分のそれを絡めている。
 その密着具合は、余程親しくならなければ埋まらない距離をたやすく埋めていたほど。
 彼がわたしの視線からそっと目を逸らし、言った。
 
 
 
 

「この子と付き合うことになったから別れてほしい」
 
 
 
 

 と。
 ……料理、しちゃおっか。 

       *

 わたしは夕食を食べる。
 弾力のあるお肉だけど、すぐに骨にあたった。
 これはどこの部位だろ。中指かな?
 彼のだといいんだけどなー。
 そんなことを思いながら、わたしは口の中でよくわからない骨をカラコロと転がしたのだった。
 

あらすじ

『素晴らしい夕食』というお題を元にして書いた即興小説を、一部加筆修正した作品です。

もっとこう、彼氏彼女の絆を感じさせるような作品を書こうとしていたのに、なぜこうなった…。

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