彼女の意外過ぎる一面にドン引きする俺……。短編小説『内緒だよっ』

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 雪山で遭難してから丸一日が経とうとしていた。
 俺と彼女は雪を掘って横穴を作り、そこに身を滑り込ませてどうにか寒さを凌いでいるが、雪山そのものが凍てついた寒さなので、体力は確実に削られていく。
「俺たち、どうなっちまうんだろうな」
「…………」
「ごめんな、俺がスノボ行こうなんて言ったばっかりに……」
 大学が冬休みになったのを利用して、俺は彼女を誘ってスノボに来たわけだが、途中で雪崩にあって気がついたら知らない場所で目を覚ました。幸い彼女もすぐ横に倒れていたので、離れ離れにならなかっただけ良かったと前向きに思うしかない。
 独りだったら……と思うとゾッとする。
 
 

「ちくしょう、やっぱ繋がらねぇ」
 俺はスマホの画面を睨んだ。さっきからずっと圏外だ。最近は山の中でも余裕で繋がるとか言われてるけど、まだ未開の地があるらしい。
「…………」
 彼女はずっと黙っている。思いつめた表情なのがどうにも申し訳ない。
「大丈夫か、体の調子、良くないのか?」
 気になって俺は訊いた。訊いてから後悔した。こんな寒いところにいて、体の調子が良い訳がないじゃないか。
「……えっ、あっ……ううん、全然平気だよ!」
 意外にも、彼女はニカッと笑って見せた。その明るい表情を見て、俺はホッと胸を撫で下ろした。
「そうか、よかった」
「うん…………あのさ」
 彼女がまた思いつめた表情に戻った。
「ん?」
「たぶんね、このままここでじっとしてたら、あたしたちは死んじゃうと思うの」
「……!」
 俺は言葉を失ったが、同時に納得してもいた。とてもじゃないけど生きていけるとは思えないほどに俺の体は冷え切ってしまっている。おそらく彼女も同じなのだろう。
 じゃあ、一緒に死のうか。
 と俺は言葉を発しようとしたが、
「だからね、思い切ってこの雪山から飛び出しちゃおうかなって考えてるんだけど」
「……え?」
 日本語がおかしいと思ったのは俺だけか?
 俺の疑問をよそに彼女は続ける。
「君は、口が固いほう?」
「ど、どうだろ。固いほうだとは思うけど」
「そう。ならいいけど。これから君が見るものは、ほかの人には内緒だよ。もしほかの人に言ったりしたら……」
 彼女は身をよじって立ち上がり、雪穴から外に出る。そして振り向いた。
「粉々にしちゃうから」
 唖然とする俺に構わず、彼女は俺の手を引く。
 そして、
 
 
 

 俺たちは空を飛んだ
 
 
 

 カタパルトから発信する戦闘機の如く凄まじいスピードで飛び出し、俺たちは空を舞った。
 その数秒後には、俺たちは山の麓に着地した。さらに彼女は、
「鬱陶しい冬山は、こうしちゃうっ」
 可愛げのある声音で彼女はそう言うと、掌を冬山に向けた。その手から赤々と光る光の弾が飛び出し、山に向かって飛んでいき、着弾。
 山が吹き飛んだ。
 平地が随分先まで続いている。
 彼女がこちらに向いた。
「あ、あのー……」
「あたしね、魔法使いなんだっ」
 てへっ、と彼女は舌をぺろりと出した。わ、笑えねぇ……。
「内緒だよっ」
 彼女がパチッとウインクしてみせた。
 俺がコクコクと頷いたのは言うまでもない。
 

あとがき

『とびだせ大雪』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。

我ながらなんという無理やりな展開(苦笑)

このお題はかなり難しかったですねぇ。

ちなみにこの話のテーマは『付き合いが長くなると色々な面が見えてくる』ですw

「え、ちょっ……おま、それはないだろー……」みたいなことが、付き合いが長くなると見えてくるもので、このお話はそれがぶっ飛びすぎてしまった彼女のお話でした。
ではまたねー。
 

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