短編小説『ほら、地球があんなところにあるよ』

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学校の食堂で昼食を取る私と彼。
私はカレーを、彼はAランチを食べている。ちなみにAランチとは白米、味噌汁、鮭の焼き魚、ひじき、納豆という栄養バランスの取れたメニューである。
「…………」
「…………」
会話がない。
と思ったら、彼がおもむろに口を開いた。
「今日は天気がいいね」
彼に口火を切らせたか、と私は思った。
言われた私は窓の外に目をやる。
晴れていた。いや『晴れさせた』というべきかな。
「晴れたね」
私は相槌を打った。
「僕達ってどういう関係なんだろうね」
「そういえば、未だ不明確なままだったわね」
しばしの沈黙。
その間に、私はカレーを一口分咀嚼し、彼は味噌汁をすする。
「僕たちは不倫関係にあるんだ」
「待ってよ。私は独身なんだけど」
「あぁ、そういえば僕も独身だ」
「ほら、不倫関係が成り立たないわ。なんだって不倫なのよ」
「それは……まあ、なんていうか、意外性を持たせたかったんだよ」
「何によ」
「僕達の関係、そしてこの物語にだろうね」
「普通に恋人でいいと思う」
「僕もだよ」
「というわけで、私達は恋人関係になったようよ」
「それは何よりだ」
そのとき、食堂の入口のほうで悲鳴がとどろいた。
何かと思って目を向ければ、ゾンビの大群が食堂に押し寄せていた。食事をしていた生徒達が逃げ惑っている。
ゾンビは生徒達に容赦なく襲い掛かり、生徒がひとり、またひとりと倒れ、また起き上がる。起き上がったときにはゾンビ化していた。
私と彼はそんな光景を眺めながら、食事を続ける。
「どういう展開なのよこれ」
「作者が意外性を考えた末に、ゾンビを登場させたんだよ。たぶん」
「意外と混沌は違うわ」
「同感だね」
彼が肩をすくめた。
「なぜゾンビなんて出したのかしら」
「僕達があまりにも動かないキャラだから退屈だったんじゃないの?」
「それは作者が私達を退屈なキャラ設定にしたからでしょ。私だってその気になればもっと面白くなれるわ」
「へぇ」
私はテーブルの上に飛び乗って彼の顔面に回し蹴りを見舞った。彼が吹っ飛んだ。
「……ゴメン。作者が私にさせたんだからね」
「わかってるよ」
彼は鼻を押さえながら言った。鼻血が出ていた。

もう察しているかもしれないけれど、ここは小説の中の世界である。
私も彼も、作者の意のままに動く人形に過ぎない。
作者が『ここは学校の食堂』だと設定すれば学校だし、『ここが宇宙ステーションの食堂』だと思えば次の瞬 間には外の景色は宇宙となる。
私は窓の外を窺う。
ほら、地球があんなところにあるよ。

 

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