短編小説『赤い瞳が異世界への入口』

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小学生の頃の話だ。

こともあろうに僕は、友人の母親に恋をしてしまった。その友人とは仲が良く、彼の家によく遊びに行っていた。

けれど僕の本当の目的は友人と遊ぶ、のを口実にして、実際は彼の母親と会うことだった。

彼の母はとてもきれいで、本当に母親なのかと思うほどに若かった。僕の母さんとは大違いだった。

大人の色気とでもいうのだろうか。今考えるとませた子供だとは思うが、彼の母親から漂う良い匂いとふんわりとした笑顔が、僕は好きだった。

ある時、友人がトイレに行き、僕が彼の部屋にひとり残された。
そこへ彼の母親がオヤツを持って入ってきた。
例によってシャンプーだか香水だかのふんわりと香る良い匂いをふりまき、極上の笑みを浮かべていた。
「いらっしゃい。これ、よかったら食べてね」
彼の母はそう言って、僕にオヤツを薦めた。
魔が差したのだろう。
気がつくと僕は、彼女に自分の気持ちを伝えていた。
「好きですっ!」
と。
緊張したせいで声は裏返り、変な調子となってしまったのを未だに覚えている。
僕の突然の告白に、彼の母親はニコリと笑って、言った。
「ありがとう」
と。
子供ながらに察した。
あぁ、フラれたなー、と。
いやまあ、当たり前だけど。
だが彼女はその後に僕にこう言った。
「私は魔法使いだから、普通の人間とは恋をしちゃいけないの」
「え?」
思わぬ答が返ってきて、僕は返答に困った。魔法使い?
すると彼の母が、おもむろに僕の唇に人差し指を添える。
僕の唇が熱を持つ。
「もし君がこちら側の世界に来る覚悟があるのなら、私は君の気持ちを受け入れるわ」
「あの、その……」
僕の心臓が早鐘を打つ。
だが、次の瞬間、怖気が走った。
彼の母の瞳が赤く明滅し出したからだ。
赤信号が灯ったかのような光に、僕の暴走しつつあった心に急ブレーキがかかる。
得体の知れない恐怖を覚え、僕は咄嗟に首を横に振った。
彼がトイレから戻ってくると、彼女は何事もなかったかのように部屋を出て行った。そのときはもう、瞳は赤く光ってなどいなかった。

その後、彼との交友は続いたが、僕が彼の家に遊びに行くことはなくなった。
小学校を卒業してからは彼が私立の中学に行ってしまった関係で疎遠になり、気がつけば僕はもう大学生となっていた。友人とも、その母親とももう何年も会っていない。同じ場所に住んでいるのかどうかさえわからないし、確認しようとも思わない。
未だに疑問に思う。
あのとき、僕が頷いていたら、彼の母親はいったいどうしていたのだろうか。本当に僕を受け入れてくれたのだろうか。
そしてその場合、僕はどうなっていたのだろうか。
魔法使いになっていた?
はっ、まさか。
けれど、あの赤い輝きの瞳を思い出すと、未だに恐怖で身が震える。
僕の知らない世界がこの世にはあって、彼の母親を通じてそこへ行けたかもしれない。
それはたぶん、知らなくて良い世界だとは思うけれど。
僕にこう結論付けさせることが、彼の母親の狙いだったのかもしれないが。

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