穏やかに思える食事風景だけど……。短編小説『最後の食卓』

SPONSORED LINK

 食事を取る僕たち。テーブルの上にはインスタントな食べ物が並んでいる。
 僕のほかには三人いる。男がひとり、女がふたり。
 僕達は楽しげに会話を楽しみ、食事を取っていた。
 男が言った冗談に、女性ふたりがクスクスと笑いを漏らしている。
 メニューはお世辞にも豪華とは言えない代物だったけれど、味は悪くなかった。
 だが、それは最後の食事だった。
 食料はもう残っていない。食料調達しようにも、外に出ることは叶わないだろう。
 なぜならここはシェルターの中だからである。

 僕達はシェルターの展示会で偶然居合わせた四人だった。
 僕と男はスーツ姿、女ふたりもかっちりとしたパンツスーツのいでたちである。
 男はこのシェルターの営業で来ていたという。
 女たちは雑誌編集者で同僚らしく、このシェルターの特集記事を書くつもりで取材に来ていたと語っていた。
 僕はというと、営業の外回りで近くを通りかかりやって来ただけだ。
 シェルターなど自分の人生とは無縁だったので見てみたいと思ったのだ。ただの興味本位だった。
 僕がシェルターに入るとすでに三人はいた。
「ハッチを閉めてください」
 と男に言われ閉めた。
 途端、外の世界が滅亡した。
 凄まじい轟音と地響きだった。悲鳴は聞こえなかった。
 一瞬の出来事だったのだろう。
 原因はわからない。核ミサイルでも撃たれたのだろうか。
 シェルターの緊急ロックシステムが外の異常を感知し作動したため、ハッチが開かなくなってしまったのだ。その原因が放射能によるものだとシェルターの営業をしていた男が推測を口にしていた。
 それから二週間が経過した。
 これが僕達の最後の食事である。
 非常食ばかりで味気なかったが、誰かと食べる食事はたとえ他人であっても美味しく感じられた。
 僕達は〝最後に〟笑顔で、
「ごちそうさま」
 と声を揃えたのだった。

あとがき

『楽観的な食卓』というお題で書いた即興小説です。どこが楽観的なんだよと思われるでしょうけど、最悪の状況の割には楽観的な雰囲気が出せたかなと自分では思っております。
やはり兵糧攻めが一番こたえると思うんですよね……。

SPONSORED LINK

関連記事(一部広告含む)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.