どうしてそんなことを訊くんだ?短編小説『水が水である理由。ボクが男である理由』

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「これ、なんだと思う?」
「何って、水だろ」
 テーブルの上にはガラスのコップに入った一杯の水がある。
 どこからどう見てもただの水だ。
 けど俺の友達はそこになぜか疑問を持たせようとする。
「本当にそう思う? 日本酒かもしれないよ」
「あ、確かに」
「でも水かもしれない」
「どっちだよ」
「飲んで確かめてみればいい」
「いやムリだろ」
「どうして」
「だって日本酒かもしれないんだぞ。俺は未成年だ。もし日本酒だったヤベーよ」
 何せまだ中三だ。
 ついでに言うと友達のコイツも中三で同じクラスだ。よくこうして学校の帰りにコイツの家に遊びに行く。
「それだよ」
「あ?」
 どれだよ。
「君が未成年であることを分かっているボクが、日本酒を出すと思う?」
「それもそうだな」
「そういうこと。つまりそれは水なんだよ」
「最初から水だって言えばいいだろ」
「まあそうなんだけどさ」

 
「じゃあボクは男、女、どっち?」
「どっちって、男に決まってんだろ」
「本当にそう思う? 女かもしれないよ」
「……いやそれはねーよ。オマエは中性的な顔立ちだし女の格好したら女子っぽくなるだろうけどよ。大体さぁ」
「大体、なに?」
「俺に女友達なんかできるワケねえだろうが。彼女いない歴と年齢がイコールのこの俺が」
 自分で言ってて悲しくなってきたな……。
「それがボクが男である理由?」
「まあ、そーなるわな」
「ボクは水と違って蓋然性には乏しいよ」
「あん?」
「何でもない」
 結局コイツは何が言いたかったんだろ。 

       *

「じゃあな」
「うん、じゃあ」
 彼が帰っていく。
 今日もボクはカミングアウトすることができなかった。
 小さくなっていく彼の背中が見えなくなるまで見送ってから、ボクは家の中に戻った。
 

あとがき

『蓋然性のある水』というお題を元にして書いた即興小説を加筆修正した作品です。

過去最高に難しいお題だったなぁ…。
 

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