※ネタバレ注意
カカオ
どうもお疲れ様です。
カカオ(@kudoshin06s)です。
恩田陸の『ユージニア』を読了したので感想をば。
『ユージニア』感想
あらすじ
数十年前に名家で起こった大量毒殺事件、
多くの被害者を出したその悲劇は、地元の人々を不安と疑心暗鬼にさせた。
それから年月が経ち、関係者たちがかつての事件を語っていく。
果たして真実は…
って感じです。
感想(ネタバレ無し)
『ユージニア』はミステリーなんですけど、全てが明らかになることを期待して読むと痛い目見るなと思いました。
以下は読了直後の僕のツイートです。
「真実」とは何ぞや?って考えさせられましたね。
物事は見る角度によって変わるのは分かりますけど、真実は必ず1つだけ存在する。
どこぞの名探偵も「真実はいつも1つ!」って言ってますもんねw
でも真実もまた見る角度や人によって変わってくるんじゃ……と思いました。
真実だと言われているものは、ただ各々が「これが真実!」って思い込んでいるだけ……みたいな。
要するに真実の価値が下がる感じ。
人によっては最悪だと思うかも(苦笑)
僕はそれでいいと思いましたけどね。
ってな感じでミステリーで重要な「真実」の捉え方が独特なので、好みはめっちゃ分かれるかと。
カカオ
以下はネタバレ盛りだくさんな読んだ人向きの内容なので、まだ読んでない人は撤退しよう!
僕が面白いと思ったところや気に入ったところなどをピックアップしていきます。
『ユージニア』の良かったところ
- 読んでるとじわじわ来る不安感
- 多くの登場人物から語られることで増した緋紗子の神秘性と狂気
- 「真実」について考えさせられた
1つずつ見ていきます。
読んでるとじわじわ来る不安感
前述の通り「真実」とは何ぞ?って感じなんですよね。
言い換えると、真実があやふやになって揺らぎ続ける。
ラストまで揺らぎ続けるものだから、読み進めていて気分壮快スッキリすることは決してないどこか不安になるw
僕はそこにホラーを楽しむようなスリルを感じていいなと思いました。
多くの登場人物から語られることで増した緋紗子の神秘性と狂気
元刑事から満喜子、テープ起こしを手伝った青年などなど。
直接的であれ間接的であれ、多くの登場人物が緋紗子について触れています。
- 緋紗子は盲目だけれど見えているようだった
- 緋紗子はブランコに乗って嗤っていた
- 緋紗子と元刑事はある意味で分かり合っていた
などなど。
出るわ出るわ緋紗子エピソードw
特に元刑事が折り鶴を渡したシーンはゾッとしましたね…。大胆不敵とはまさに緋紗子のこと……。
「真実」について考えさせられた
14章で満喜子が自分が「真実」だと思っていたことが実はそうではなかった、って展開。
あれでこの物語における「真実」、
そして世の中全般で使われている「真実」という言葉について考えないワケにはいきませんでした。
例えば歴史だって月日が経って新たな事実が発覚したりすることもある。
これまで「これが真実だ!」って思われていたことが覆る。
そうなると
- 真実って何なんだろうな
- どうやって観測するんだろうな
- ていうか人の数だけありそうで認識すんの無理じゃね?
なんて思い始めちゃいました僕。
人によっては答をハッキリさせたいのでそれは最悪だと思われ。
でも僕は「真実は1つ!」って言い切られると窮屈な感じもするんで、緩い真実があってもいいんじゃないのかなと思ったり。
とはいえ答をバシッと示してくれるミステリーも好きですけどね。
『ユージニア』の微妙だったところ
細かい謎が謎のままじゃないですか?
例えば以下のツイートは僕が4章を読んだ後に呟いたものです。
第4章読んだ。「家政婦さんが言う【違う】とはどういう意味なのか」「坊っちゃんが回収したはずのミニカーはなぜ再び落ちていたのか」「事件直前に電話をかけてきた女は何者?」
特に気になるのはこの3点だな…。それにしてもまた思わぬ角度から語ってきたなぁ。面白くなってきたぜ。
— カカオ (@kudoshin06s) December 2, 2019
例えばミニカー。
繰り返し意味深に登場してきたんで何かキーになるアイテムなのかと思っていたら、その後は登場しなかった。
あと3章に登場する「久代」とは…。
緋紗子のことだとは思うんだけど、なぜ名前が違うのか僕には最後まで分からなかったです。
なんかこう、読み終わっても不安が残る本ですな(苦笑)
『ユージニア』の感想|まとめ
この作品はハッキリとした答を求める人には不向きな小説だと思います。
「真実」には揺らぎがあり、観測の仕方次第で変わっていく。
これを受け入れられるかどうかで、評価が変わってきそう。
ちなみに2019年12月の段階でのアマゾンの評価は☆4つを割っていました。ちょい微妙なラインで高評価ではないっすね。
実際読んでみると、確かに高評価は得にくそうな話なんですよね。
でも登場人物たちの内面は読み応えがあるし、
緋紗子や満喜子の内面を深堀りしていくことで感じられる怖さはある意味でホラーっぽくて良かった。
手放しで高評価するというより、ひっそりと「面白かったよ」って言いたくなるような小説でした。