三浦しをん『木暮荘物語』感想。ボロアパートに住む人々の笑いとシリアスに読み応え有り!

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どうもお疲れ様、子供の頃はボロアパートに住んでたカカオ(@kudoshin06s)です。

三浦しをんさんの『木暮荘物語』を読了したので感想をば。

三浦しをん『木暮荘物語』感想

あらすじ

小暮壮というボロアパートに住んでいる人々の物語。

サラリーマンから女子大生、大家の老人など、それぞれ全く違う立場の人間が住んでいる。

各々重く苦しいモノを抱えながら生きていた。

そんな接点の無さそうな彼らが、徐々に関りを持って温かさに気付く……。

って感じです。概ね。

いや、温かさどころか「この先この人たちどーすんだろ」みたいな登場人物もいたんで。。。

群像劇を連作短編的に描いていました。

『木暮荘物語』の良かったところ

  • 登場人物たちが徐々に接点を持って馴染んでいく
  • 笑いとシリアスの塩梅が絶妙
  • 連作短編で読みやすい感じに区切られてた

最初はほとんど交流のなかった登場人物たちが、ひょんな出来事や一歩を踏み出すことで交流していく様子はほっこりしました。

その一歩が奇怪だったりして笑いを誘うことも。

かと思えばシリアスなシーンや設定が飛び出して胸にグッときたり。

笑いとシリアスのバランス感が凄い。

そして多くの登場人物が登場しながらも、読みやすかった。

これは短めでキリの良い感じに区切ってあったからだと思われ。

『木暮荘物語』の微妙だったところ

唯一気になったのは、木暮荘の外の人物たちの話も結構あったことです。

木暮荘を外部の視点から見ることで得られることもあるとは思うんですけど、ちょっとボリュームが多いかなぁと僕は思いました。

木暮荘の中をより濃くしてほしかった。

以下はネタバレ盛りだくさんな読んだ人向きの内容なので、まだ読んでない人は撤退しよう!

僕が面白いと思ったところや気に入ったところなどを、エピソードごとにピックアップしていきます。

『木暮荘物語』各エピソードの感想

1話目の「シンプリーヘブン」

そこはかとなく並木に「男はつらいよ」を感じました。

待っているのが妹じゃなくて元彼女だけど。並木は彼女だと思っていたから切ない(けど自業自得感がw)

並木からは、風来坊みたいな生き方しか出来ない男の愉快さと寂寥感が感じられて胸に染みました。

同時に、並木にうんざりしつつも心の大切な場所に保管していそうな繭も良かった。

2話目の「心身」

大家のお爺さんが友人の死をきっかけに、性に目覚め、どうにかして女性と……って悩むお話。

奇怪な一歩を踏み出して色んな人と交流していくお爺さんの様子が面白かった。

この話を読んでいて

僕「体がしっかり動く若いうちにやりたいことはやっておいたほうがいいな…」

って思いましたね(苦笑)

このエピソードから女子大生の光子とご近所さん的に親しくなるのは意外で、とても楽しい展開でした!

3話目の「柱の実り」

木暮荘の住民ではない美禰が登場。

何とも言い難い不思議展開に、村上春樹の作品を読んでる感が。

美禰の過去の罪が妙な形になって現出したって感じなんですかね。

ジョンの汚れをシャンプーで洗い流すことで、一緒に罪も流れてくれと願うばかり。

個人的には、なぜ美禰のエピソードを入れたのかがちょっと謎。

ジョンの洗髪のためには確かにトリマーの美禰ほど適格な登場人物はいないと思うけど…。

4話目の「黒い飲み物」

まさか舞台がフラワーショップ佐伯に移って、しかも佐伯(奥さん)視点になるとは思わなかった。

しかも彼女は夫の浮気を疑っていて、繭を始め他の女にも疑いの眼差しを注いでいる。

繭視点だと良い感じの店主さんだと思ったけど、本人視点になった途端にドロドロして面白かったですねぇ。

マスターが浮気していたことが明らかになったことで、奥さんとしてはある意味望む展開になった……のかもしれない。

今後マスターは奥さんに頭が上がらず、奥さんの支配下に置かれると思われるし。

それもまたキツイけど(汗)

あと繭視点で見ると、勤め先の奥さんと店主の修羅場なんぞ見せられたら働くとき気まずそうだなとw

5話目「穴」

木暮荘のサラリーマンことが神崎登場。

冒頭からいきなり覗き野郎であることが発覚して笑った。

僕「コイツもマスターみたいにバッドエンドなのでは…」

と思ったら、まさかの奇跡の大逆転劇って感じでした。

光子と付き合っているキモい妄想を逞しくしたり、光子の行動を把握しまくったりしてたというのにw

でもめっちゃ面白かった!

6話目「ピース」

最も呑気に生きてそうな女子大生こと光子。

けれど実は全登場人物中、最もヘビーな設定なのでは…。

スポットが当たらないと分からないもんですな。

友達が生んだ赤ん坊を押し付けられたことで、光子の優しさが表に出てきた感じが切ないながらもほっこりした。

光子の赤ん坊ができないという設定があるからこそ生まれた優しさだと思うから。

さらにその子はいずれ去っていく子だから……。

切ねぇ。

そんな光子に覗き野郎が黒飴を天井から落としたのが、おばあちゃんが天国から飴をくれたようでいてグッときた。

実際は除き野郎だけど。

7話目「嘘の味」

まさかの並木視点で、しかも彼は繭のストーカーと化していた。

まぁマイルドなほうだけど、それでもやってることはしょっぱい。

てっきり海外を放浪しながら写真を撮っているとばかり思っていたんで、彼の意外な一面も読めてビックリしました。

そこに味で相手の浮気を看破する謎の黒髪女と一緒に暮らすようになるのだから超展開。

どんな取り合わせだよって感じの組み合わせだったけど、互いの欠けてる部分を補えそうな感があった、ような気がした。

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