※ネタバレ注意
カカオ
どうもお疲れ様です。
読書好きなカカオ(@kudoshin06s)です。
辻村深月さんの『サクラ咲く』を読了したので感想をば。
『サクラ咲く』感想
あらすじ
主人公の塚原マチは読書好きの中学一年。
控えめな性格で、頼まれると断れない性格な自分に悩んでいた。
そんなある日、マチは図書室の本の中から一枚の便せんを見つけた。そこには
『サクラチル』
とだけ書かれていた。
その後もマチは度々、しかも別の本からメッセージが残された便せんに遭遇する。
自分の交友範囲の中に便せんを書いた人間がいるのでは?
そんな疑問を抱きながら、彼女はついに便せんの主と紙面上でやり取りをすることに…。
ってな感じ。
この本は三編からなる傑作集となっていて、このあらすじは表題作になっている『サクラ咲く』の内容です。
感想(ネタバレ無し)
どのエピソードも思春期の少年少女たちが主要登場人物で、
その年代でしか味わえない感覚が物語を通して読み手である僕に伝わってきました。
話ごとに主人公が変わり、考え方や状況も違うので三者三様の青春が味わえる感じが良かったです。
ここではネタバレしちゃうので詳しくは書けませんけど、
普通に青春モノかと思いきや変化球な設定も突っ込んできて驚かされましたね。
読み進めていくと、意外な登場人物たちの登場もありました。
淡々としている雰囲気の中に小さなサプライズも用意してあるところがテクニカル!
カカオ
以下はネタバレ盛りだくさんな読んだ人向きの内容なので、まだ読んでない人は撤退しよう!
僕が面白いと思ったところや気に入ったところをピックアップしていきます。
『サクラ咲く』の良かったところ
それぞれの話ごとに良いところを挙げて解説していきます。
約束の場所、約束の時間
- タイムスリップ展開
- 運動部で「いかにもな青春」を謳歌する感じ
- 別れが描かれている
タイムスリップ展開
まさかのタイムスリップ展開には驚かされましたね。
表紙やあらすじの感じからして、現代日本を舞台にした青春モノとばかり思ったんで。
運動部で「いかにもな青春」を謳歌する感じ
朋彦がリレーで逆転勝利するところは、いかにも運動部の青春って感じで輝いていました。
それが感動できて良かったっていうのもあるんですけど、3話目の話と対になっているところがお見事でした。
別れが描かれている
よほど重い設定でなければ「別れ」って青春モノでは描けないと思うんですよね。
せいぜい卒業で違う学校に行くとかです。
けれど悠が朋彦と美晴を助けるためにタイムスリップした結果、悠は未来へ帰らなくてはいけなくなった。
100年は経っているため、朋彦は悠と永遠に会えなくなってしまう。
言い方は変ですけど、十代前半で永遠の別れを描ける最善手じゃないかなと。
カカオ
永遠の別れを経験した朋彦が、未来に訪れる喘息に備えるためにやれることをやると決意したのもよかったですなぁ。うん。
サクラ咲く
- マチの性格に共感する人は多そう
- タイムスリップからの普通の青春モノでした
- 他の話と間接的に繋がっていた
- 「便せんの主は誰なのか」という可愛いスリル
- マチが一歩一歩がんばっているところ
マチの性格に共感する人は多そう
マチのように人の頼みを断れずに仕事を抱えている大人はリアルにいっぱいいます。
きっと共感できると思われ。
タイムスリップからの普通の青春モノでした
1話目でタイムスリップがきたので
カカオ
じゃあ次はどんな手で来るんだろ…
と、身構えながら読んだら割と普通な青春劇でした(笑)
朋彦と美晴もチラッと出てはきますけど「良い感じの先輩」みたいに描かれてるだけ。
この肩透かしがなぜか心地よかったです(笑)
他の話と間接的に繋がっていた
前述の通り朋彦や美晴も登場するし、そもそも同じ学校が舞台なので話は間接的に繋がっている感じです。
この「間接的」っていうのがポイント。
朋彦たちの話が無くても『サクラ咲く』だけでも話は成り立ちます。なので読んでなくても理解は余裕です。
その話と話の距離感が良かったなーと。
「便せんの主は誰なのか」という可愛いスリル
マチが便せんを書いた人の候補に、みなみや奏人を挙げては推理を巡らせているところがなんだか可愛かったです。
マチの「控えめな性格」によって、犯人探しに踏み込ませなかったところも、もどかして良い感じ。
マチが一歩一歩がんばっているところ
当初は書記に推薦されて断れなかったりしてたマチが、一歩一歩前に進んでいくところが読んでいて元気付けられました。
- 便せんでのやり取りで本音をブチまけた
- みなみ達との交流
この二つがマチを押し上げた感あります。
どちらも大切で、便せんのやり取りで誰にも打ち明けられなかったマチの心の内を外に吐き出したことで気持ちが軽くなったのでは、と僕は勝手に想像してます。
また、みなみや奏人との出会いという偶然を手にしたことも大きい。
環境次第で人は変われる、と思えて読み手の僕は元気になれた感ありました。
世界で一番美しい宝石
- 「学校は誰のものだ」という問い
- 大人の社会に起きてることは思春期でも起きている
- 「タイムスリップ」の件の先が読める
- 「学校は誰のものだ」という問いの答
「学校は誰のものだ」という問い
一平が言う「学校は誰のものだ」という問いに、個人的にめっちゃ共感しましたねぇ。
振り返ってみると学校って、運動や何かよく分からないけど目立ってる人が中心になって回してる感ありました。
僕はというと中心から割と外れてるところにいたんで、まさに一平ポジションでしたね(苦笑)
そんな僕からすると、学校は少なくとも僕のものではなく「行動の自由もなんか制限されてね?」と思わずにはいられない。
一平の問いかけは、僕の青春のモヤモヤを思い出させましたなぁ。
カカオ
そして1話目の朋彦と対になっていて、しかも朋彦の息子なんだから驚きましたね。
大人の社会に起きてることは思春期でも起きている
新聞部が立花先輩のプライベートを暴く取材をして、彼女を追い込んだ様子が現代のマスコミって感じでしたなぁ。
よく考えてみると、いじめは学校だけかというと会社でも起きたりしているワケで…。
大人の社会で起きることは、既に青春時代でも起きている。
カカオ
青春時代で起きるんだから、社会に出たら同じ徹を踏まないようにするって人がほとんど……だと思いたい。
「タイムスリップ」の件の先が読める
一平の父親の朋彦が、未来で起こる喘息のためにがんばって薬を作っていたってことが分かったのが最高に良かったです。
メインの話ではないんで間接的ではあるんですけど、智彦の頑張りを感じさせてくれましたなぁ。うん。
「学校は誰のものだ」という問いの答
「みんなのもの」という答で、ほっこりしました。
ありきたりかもしれません。
でも「ありきたり」が貴重に思える今の時代を考えると、一平がこの答に行き着いたことは嬉しいです。
『サクラ咲く』の微妙だったところ
細かいところなんですけど、その時代を示すような機械類が登場したほうが良かったかもと思いました。
『約束の場所、約束の時間』と『サクラ咲く』は同じ時代で、3話目の『世界で一番美しい宝石』で控えめに言っても20年以上は先の話です。
3話目になるとネットで検索したり「ICレコーダー」なんて単語も登場します。
けれどそれ以前のエピソードには、その時代を感じさせる物が出てきません。
ネットが普及する以前とは推測できます。
マチ達が自由研究で一切ネットを使わなかったことからも、たぶんネット普及以前の時代かなと。
でも、未来から来た悠もいるから、時代と時代の対比があったら面白いのになぁと。うん。
全体を通して良かったところ
- それぞれのエピソードのボリュームが程良くて読みやすかった
- 間接的に話が繋がっていて飽きない
- いろんなタイプの青春を味わえる
こんな感じですね。
3話あるので3日間かけて読むのもいいかも。
『サクラ咲く』はこういう人にオススメ!
- 青春モノが読みたい
- ただの青春モノではなく少し捻りが欲しい
- 読書に割く時間があまりない
- 陰キャの自覚がある
第1話だけは陰キャ主人公ではないんですけど、以降の話との対になっているんで比較すると面白いですよ。
『サクラ咲く』感想|まとめ
僕はこの本を一気に読破しました。
3日間かけて読むといいかも、などと書いておいてなんですけど。
タイムスリップ展開、便せんの主、絵本探し。
どの展開も先が気になって、どんどん読み進められました。
カカオ
読書感想文のネタに困っている学生さんに良さそう。